61 / 80
第61話
俺はそのミイラ、【神】の身体からもやのようなモノが立ち上がるのを見ていた。
そのモヤは集まり、実在の半分ほどの大きさの【神】になった。
ただし、土色の朽ちたミイラではなく、おそらくソレが以前そうであっただろう姿に。
金色の肌は煌めき、赤い髪は燃えるよう。
白い着物は輝くよう。
ソレはミイラ化した本体から離れ滑るように動きだした。
アイツのところへ行くのはコレか!!
俺は悟った。
行かせない、俺は引き止めようと蹴りを繰り出した。
虚しく、その身体はホログラムのように脚が通り抜けた。
ソレは滝をなんなくくぐり抜け、宙に浮き、洞窟の天井に開いた穴から地上へと上がっていった。
時間がない。
時間がない。
俺はもう迷わなかった。
ともだちにシェアしよう!