68 / 80

第68話

 キシャア!!     ソレは歓喜の声をあげた。  杭は身体から抜かれた。   杭は投げ捨てられる。  俺の目の前に落ちた杭を見て、俺は人間では持ち上げることも可能ではなかったことを知る。  巨大な石の杭。  ソレは咆哮を上げながら、ゆっくりと身体を起こしていく。  その間にも、身体は膨らみ続ける。  どんどん大きくなっていく。  それと同時に音楽のようなものが聞こえてきた。  ソレが起き上がった、だが、身体はもうこの滝の裏の穴では収まらないほど大きい。  頭がつかえた。  ソレは苛立つように腕を振り回した。  穴の天井が崩れる。  俺は落ちてきた岩を慌てて避ける。      キシャア!!    ソレはまた大きくなりながら腕を脚を振り回した。  また穴が崩れる。    俺はここにいたら落ちてくる岩に潰されると判断した。  俺はここから出ることに決めた。  この身体で、また壁をのぼって洞窟の外に出られるか。  でも、このままでは生き埋めになる。  俺は迷わなかった。  穴から飛び出し、滝に打たれながら滑る壁をつかみ、よじ登り、地上を目指す。  俺は、あそこでみたものを忘れない。  地上に上がるための穴に潜り込む前に俺が見たのは、滝を割るようにして、岩を崩し、岩を割りながら壁から出て来る巨大な金色の生き物と、  それを迎えるように洞窟の天井の穴から流れ込んでくる、沢山の色とりどりの化け物達だった。  化け物達の一部は楽器さえ持っており、それが俺が聞いた音楽のもとだった。  彼らは歓声を浮かべ、金色の生き物を迎えた。  ソレはまだまだ大きくなってきていた。    キシャア!!!!!    ソレは洞窟の天井を崩しながら叫んだ。  その地響きを感じながら、俺は慌てて地上への狭い穴に潜り込んだ。  アレは神なんてものではない。  神だとしたら破壊神だ。      

ともだちにシェアしよう!