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第73話

 「町はどうなったんです?」  オレは尋ねた。  山であの人に殺された男の他は、奇跡的に死者はでなかった。   土砂は町の半分を埋めたが誰もそれで死ななかった。  祭りで人々が集まっていたことが、奇跡につながった。  土砂崩れのおかげでその後、難なく町を離れられたと教授は言っていた。  教授はあの人とあの子の女の子をつれて、町のはずれに隠していた車で脱出したのだ。  あの子が殺した神の死体も、あの人が殺した人の死体もどうなったのかわからない。  あの人が罪に問われる様子もない。  俺を撃った人たちが罪を問われることも。  ・・・なかったことになった。  町の秘密を守っていた何か大きな力が今度は隠蔽しているのだろう。  「町を離れた人々もいるようだ。前のようにはいかないだろうね」  教授はそれだけを言った。  おそらく、町は終わった。  オレが町を終わらせた。  オレはしばらく目を閉じる。   「しかし、アイツあのまま埋めておけば良かったな」  教授が明るくとんでもないことを言い出した。  「あの人、埋まってたんでしょう」  オレは感心する。    本当に死なない。   人のことは言えないが。  「腕切り落として、土の中に埋めても死なない。もう、何やっても殺せる気がしない」  教授は呻いた。  「殺したいみたいに聞こえますね」  「時々ね」  教授はオレの言葉に真剣に答えた。  オレはまだ形の歪な教授の爪を見る。  そんなことを言っているが、土の中のあの人を自分の爪を剥がしながら掘り出し、助けたのはこの人だ。  「   がここに埋まっていると教えてくれなければ無理だった。土砂崩れから逃げることもあの子が教えてくれた」  花嫁になるはずだった女の子。  花嫁達はシャーマンなのだと教授は言う。    彼らが現代社会でその才をどうしていくのか見当もつかないと教授は言った。  「あの子とあの人はまだ会っていないんだ」  オレはぼんやりつぶやいた。  お堂の前で土砂は止まっていたのだそうだ。  ほぼ全裸でボロボロの刀を抱え座り込んでいたあの子を回収したのも教授だ。  教授は神殺しが行われたのだと推測している。  「会わせていいものなのか分からなくてな。まだ会わせてない。なんせ拉致監禁していた犯人と被害者だしな」  教授はオレを窺いながら答えた。   この人は優しい。  オレの心を気遣ってくれてる。  「気にしなくてもいいですよ。もう、あの人のことは諦めました。オレ、ちゃんとした彼氏でも探します」    本音だった。  痛みがないわけではないけれど。  「そうか。それがいい。それが一番だ!!」  何故か教授が浮かれはじめた。  変わった人だな。  オレは目を閉じる。  もう少しだけ、眠っていたい。   悪夢は終わったのだから。

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