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不安4
何度も優しいキスを落とす。
男は眠る恋人が愛しかった。
意識を失っても貪り続けてしまった。
可愛くて、可愛いくて、いやらしくて、気持ちいい。
「愛してる・・・」
本当はまだしたかった。
この一月ろくに触れてない。
良く耐えられたと思う。
この身体に溺れている。
たまらなく、いい。
味も感触も感度も、挿れた時の締め付けから何から何まで最高だ。
でもそれ以上に彼そのものに完全にまいってしまっている。
こんなに綺麗な人、見たことがない。
嘘もごまかしも何もない。
静かにそっと優しく生きている人。
歌だけを抱えて。
こんな人がいるのか。
その事実に未だに感動する。
「僕のモノだ」
抱きしめる。
風呂でからだを清めて、パジャマを着せた。
ベッドのシーツもかえて横たえた。
噛んだ傷口も消毒した。
これには反省している。
身体中につけてしまった。
でも、どうしても貪りたくなる時がある。
・・・あの男に植え付けられた性癖。
されていたのは、僕だったけど。
あの男が彼に会ったと聞いて怯えた。
彼はあの男の好みそのものだ。
中性的で美しい若い男があの男は好きなのだ。
そういう意味では、なぜすっかり育った自分をあの男が抱き続けるのかは良くわからなかったけれど。
彼が犯されると思っただけで、心臓が止まりそうになる。
彼があんな目に合わされたのなら、あの男を殺すつもりだった。
でも、まさか・・・無傷で帰すとは・・・思わなかった。
でも、彼は意外としっかりしてるから・・・上手く逃げてみせたのかもしれない。
守らないと。
僕が。
男は決意する。
男は知らない。
彼があの男を殴り倒したことは。
男は彼を抱きしめる。
この腕の中のモノが愛しくてたまらない。
でも、ふと思い出す。
さっき、風呂の鏡でチェックした、当分消えそうにない自分の首筋にある赤い痕を。
「・・・わざとつけやがって」
顔をしかめる。
そういう女だ。
彼といる時にあの女について考えるのは彼を汚す気がして、男は考えるのをやめた。
「愛してる」
男は優しく囁き続けた。
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