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破局5
合い鍵を使って部屋に入った。
物音は立てない。
彼が眠る部屋にいく。
着替えもせずに眠る姿に、あの男が本当に触れていないことを納得し、ホッとした。
いや、もう彼は男のモノではないのに。
そんな資格はもうないのに。
髪に触れたかった。
涙を流しなから眠る顔に唇を落としたかった。
風呂にいれて着替えさせて、腕の中で甘やかしたかった。
でも、もう、許されない。
本当はこの部屋にいることも許されないだろう。
男は眠る彼のベッドの足元で、膝をつき泣いた。
失ったモノの大きさは耐え難いほどだった。
どうすれば許される?
どうすればもう一度?
分からなかった。
分かっていたことは一つ。
「僕は君を失わなければならないんだな」
男は小さな声で呟いた。
それが僕への一番の罰だから。
胸が痛い。
本当に痛い。
この世界の片隅で、そっと生きていた誰よりも綺麗な人。
君の目から見る世界は本当に美しかった。
君から溢れ出る音楽は、世界を塗り替えた。
本当に美しいものは君の中にあった。
誰にも入れなかった君の世界に入れることの幸せを、何故僕は忘れてしまったんだろう。
世界はもう二度と美しく歌いだすことはないだろう。
愛してる。
愛してる。
いつまでも。
男は立ち上がった。
行かなければならなかった。
「さようなら。愛してる。・・・誰よりも」
男は彼に囁いた。
その言葉が届かないと知っていても。
そして部屋を出て行った。
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