52 / 75

探査2

 首を噛む。  血の味がするまで。  彼が呻く。  でも、苦痛だけじゃない甘さがその声にはある。  血を舐めとる。  そして、吸い痕がのこるまで吸う。    僕の印。  男は満足する。    「どうされたい?言って?」  優しく問う。  言うまではただ優しく背中を撫でるだけにする。  彼は真っ赤になる。  今日は言うことしかしてやらないと決めた。    「どうして欲しいの?」  固くなったそれを彼のそれにグリグリと押しつけながら聞く。  でも、それ以上はしてやらない。   「ああっ、はぁっ」  彼は焦れて、自分からそこを押しつけてくる。  これはこれで可愛いので様子を見る。  彼の指が自分と男のモノの両方を握りこすり始めた。  男も声を零す。  男は何もしないで、彼の指に任せる。  二人でイった。  「ねぇ、それだけでいいの?」  耳元で囁く。  彼は切ない顔で首を振る。  「して欲しくないの、色々」  そっと乳首を触れた。   それだけで、身体がビクンと揺れた。  「言ったら何でもしてあげる」  男は言う。  彼が泣きそうになるのがたまらなく可愛い。  「胸、吸って・・・」  彼が小さな声で強請る。    彼は胸を弄られるのが大好きだ。  「それだけでいいの?、胸吸うだけってのもいいけど。それはそれで」  男は胸を吸ってやりながら言う。  チュッと音を立ててすえば、彼の身体がしなう。  「はぁっ・・・もっと色々して・・・」  彼が喘ぎながら言う。  「例えば?」  男は乳首を味わう合間に聞く。  「舐めながら噛んだり、吸ってから舌でしたり・・いつもみたいにして・・・」  彼にお願いされる。  可愛い。  噛んで、舐めて、吸って。  男も彼のここが好きだ。  歯ごたえも好き。噛みながら舐めるのも好き。吸ってから舌ではじくのも好き。  ずっとここだけ弄っててもいい。  「はぁっ、好き、ここ、気持ちいい、もっと・・・」  彼は声を上げて乱れる。    「挿れて欲しくないの?ここ、寂しくない?」  男はそっと、指で彼の後ろの穴をなぞった。  「挿れて」  壊れてきた彼が言う。  もうすぐ胸だけでイけるだろう。  張りつめている。   「挿れるだけ?」  男は意地悪く聞く。  「入り口のとこでグリグリして・・・奥・・もこじ開けてぐちょぐちょにして・・・激しいの欲しい・・・」  可愛すぎた  「おねだりが足りないなぁ」  男はささやき、胸だけしか弄ってやらない。  それもイケないくらいの気持ち良さしか与えてやらない。  軽く吸い上げるだけだ。  彼が気持ち良いけれど物足りないのに、悶えだす。  「もっといやらしく言えるよね、僕、教えたよね」   男は言う。  「・・・オレのいやらしい穴にあなたのモノをぶち込んでぐちゃぐちゃにして・・・奥まで犯して・・・オレがやらしいから、欲しくてたまらないから・・・」  彼が昔無理やり言わせた言葉を叫んだ。  男は満足してそこに自分のモノを沈めた・・・。  男はそこで目を覚ました。  今は寝袋ではなく布団を購入した。  彼と一緒のベッドまではまだ遠いことを覚悟した。  「夢だよね、まぁ」  驚きはしなかった。  途中からそんな気がしてた。  情けないことに夢精していた。  中学生か。  男は苦笑いする。  疲れ過ぎてるのもあるんだよね。  そう思った。  連日のジム通いは・・・思った以上にきつかった。  「ジムでダラダラされるのは迷惑だからな、来る以上はバシッと練習しろ」  友人は言った。  何で僕が・・・とは思ったが、大人しく従っている。  ジムにはずっと通っていた。  有名な会費の高いジムでパーソナルトレーナーをつけて週に数回通ってはいた。  だけど、男が知っているそんなジムとは格闘技ジムは全くちがった。  彼がトレーナーだったから言うことは聞いた。  「ロープね、縄跳びなんだけどとりあえず3ラウンド跳んでね」  彼が言う。  ジムの中ではずっと三分に一度のアラーム、そして一分のインターバルのアラームが交互に鳴っている。  三分を1ラウンドとして、それを一つの単位としてトレーニングしていく。  それだけでも普通のジムとは違った。  それに、だ。  「インターバル以外でタラタラしてんじゃねーぞ、タラタラするんだったら帰れよ!」  それそんなルールは僕の行っていたジムではなかった。  お客様だったからだ。  格闘技ジムは会員はお客様ではないらしい。  「まあ、ここはプロ選手が多いとこだからね」  彼にそう言うと笑った。  道場的なノリがあるらしい。  ダラダラ練習している者は明らかに選手ではない者でも確かにいなかった。  縄跳び3ラウンドは地味につらかった。  その後、彼に教えられ、パンチを習う。  ジャブストレート。  いわゆるワン・ツーだ。  それでサンドバックを撃つ。  「あなたはピアノひかなきゃいけないから、軽く撃つだけでいいよ」   そう言われたが、軽くでも1ラウンドで男は息が上がってしまった。  いや、1ラウンド持たない。   「だらしねーぞ」  友人の声が飛ぶ。    あの男をいつかどこかで確実に泣かす方法を考えておこう。  男は固く決意した。    「あなたはパンチよりこっちを練習した方がいいかもね、ピアノがあるから」  彼はキックも教えてくれた。    ピアノにこだわってくれるのが嬉しい。  彼は自分が選手でやっているのはボクシングなんだけどね、と言いながら、サンドバックを蹴ってみけた。  彼はしなやかに蹴り、サンドバックは綺麗な音を立てた。  やってみる  上手く蹴れない。  音も違う。  「最初からはムリだから」  彼はそう言ってくれたが、彼の前で全く格好つかないのは悔しかった。  友人が笑うのがムカついた。  あの男を合法的に消す方法も考えておこう。  金なら持ってる。  最低な考えを真剣に男は検討していた。  「今日はここまで、ね。初日にしては頑張ったよ」  彼が優しく言った。   床にへたりこまかったのは、彼に対する見栄と、友人に対する意地だった。  そして思い知らされる。  彼はこれを毎日毎日・・・。    「本当はこの後、ミットやディフェンストレーニングやマススパーやスパーリングがあるんだけどね」  彼はニコニコ言う。  男は愕然とする。  まだあるのか。  「うん、それに自主練で自分で走ったり、筋トレとかもあるよね、他にも色々けどまぁ、こんな感じ」  彼の言葉に力尽きた。  とうとう膝をつく。  「ストレッチしてシャワー浴びてから、見学しててね。何なら帰っていいよ。オレ達、ジムが終わるまでいるから。オレもここから自分の練習するし」  彼が言った。  「ジムは何時に終わるわけ」    男は聞いた  ジムに来たのは6時過ぎだった。  今は7時過ぎだ。  「11時過ぎかな」   彼は言った。  毎日5時間位ジムにいるのか。  男は絶句した。  「オレはジムの手伝いもしてるからね」  彼は笑った。  楽しそうな笑顔だった。  男が知らない5年の彼がそこにいた。    男は汚れた下着を風呂場で洗って、洗濯機に入れる。  彼は朝から走りに行っている。  帰ってくるまでに朝ご飯を作ろう。  男は自分とは別世界の人間に彼がなっていたのだと思い知らされた。  毎日毎日、朝一時間走って、仕事して、ジムに行って。  毎日毎日毎日。  気まぐれな男には理解が出来ない。   数日ジムに通っただけで、男はボロボロだ。  正直、隙があれば彼との距離をどんどん縮めていきたいとは思っていた。  彼が歌えるようになればそれが一番だ。  でも、出来れば彼が男をもう一度受け入れてくれればいいとは常に思っている。  もう一度。  もう一度彼に愛されたい。  それは望まずにはいられない。  しかし、ジムから帰ってきたら彼と話すよりも先に寝てしまっている。  距離を縮めるどころではない。  触りたいのに。  どさくさに紛れて彼とそういう風になりたいのに。  それが上手くいかないのだ。  夢精くらいする。   「何で僕がトレーニングしないといけないんだ・・・」   男はブツブツ文句を言う。  魚を焼き、味噌汁をつくり、卵焼きを焼く。  それでも、だ。  やはりジムにいる彼と過ごしてみてわかってきたことはあった。  練習後へばって、見学用の椅子に腰掛けて、彼を見ていた。  「あの子の友達だって?」  ニコニコとひとの良さそうな年配の男に話かけられた。  会長だ。  来てすぐに彼と友人に引き合わされた。  ジムの入会の手続きをしてくれた。  彼の大事な人なのは分かった。  父親のいない彼が、この人に父親を見てるのだな、と思った。    だから、男は丁寧にあいさつした。    普段は傲慢無礼だが、ちゃんとした態度をとれないことはないのだ。  したくないだけで。  友人や彼が男の言動をやたらと心配していたが。  「友人・・・よりは親しいです」  男は言った。  恋人だ。  それは言わないけれど。  「親友かぁ。アイツ以外にも親友がいたんだねぇ、あの子にも」   会長はニコニコする。  アイツというのは友人のことか。  ちょっと気に入らない。    

ともだちにシェアしよう!