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秘密2
「君がこのジムに来るきっかけになったのは彼のせいなんだろ?多分、彼が君を傷つけた」
会長は言った。
彼はただ、動くことさえできずに話を聞いている。
「自分が消えるのが一番で、それが自分への罰にもなるからって思っていたって彼は言ってたよ。でもね、もう長くないと言われた頃に君に再会して、君に異変が起こっていることを知って・・・、死ぬ前に出来るだけのことをしたいと思ったんだって」
会長のしている話は何の話だろう。
彼にはわからない。
言葉の意味はわかるけれどわからない。
急に男に心を許した友人。
男がやたらと脳神経外科に詳しかったこと。
男が親しかった、わざわざ新幹線で連れていかれた病院の有名だという医師。
気が付こうとしなかっただけて、符合は沢山存在していた。
男はおそらく、脳に関する病なのだ。
「何で言わなかった!」
彼は友人に怒鳴った。
友人は困ったような顔をする。
責めるべきではない。
友人は約束したら約束を破れない。
そういう男だ。
「ボクもね言うか言わないか悩んだの。でもね、ボクは彼がそれを自分で君に告げると思ったの。
だってね、もうすぐ死ぬ人なら憎くても赦せることもあるでしょ。彼は赦されたがってたからね、君に」
男は、言わなかった。
最後の最後まで言わなかった。
それを言えば赦されたかもしれないのに、それを言わなかった。
男は赦されることさえ望むのを、やめたのだ。
男が死ぬことを知れば、彼が悲しむから。
赦されたとしても、彼が悲しむから。
あの人は。
あの人は。
あの人は・・・。
「あの馬鹿!!」
彼は怒鳴った。
馬鹿すぎる。
あれだけワガママなくせに、なんでそんなところで、なんでなんで、散々傷付けたくせに、自分勝手なくせに・・・。
無理やり抱いて恋人にはする、他の男に抱かれる、他の女を抱く、人の曲勝手に公表する。
また押しかけてくる、どんどん距離縮めてくる。
あげく頼んでもないのに、憎しみを引き出し、憎まれて去っていく。
それだけ好き放題していたくせに、何故そんなところだけそんなことをするんだ。
「あの大馬鹿野郎!!」
彼はもう一度怒鳴った。
怒っていた。
これ以上ないくらい怒っていた。
「・・・で、どうするの?」
会長がにこにこ言った。
「あの馬鹿を殴りに行きます」
彼は真っ直ぐに会長を見つめて言った。
「そう、自分が本当にしたいことはどうあってでもしなさい。もう、今の君なら出来るよね」
会長は言った。
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