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第3話

「あっ、怒ってる顔も可愛い」 肘をテーブルについて下から覗き込まれて、思わず仰け反った。 「冷たいわあ」 ニコニコ笑うその顔も胡散臭く見えてくる。 「生憎、男にナンパされたことなんてないので」 「え、ほんまに?じゃあ君の初めて、貰っちゃったなあ」 グラス空やけど?と指を差されて、今度こそビール! ビールにする!! お前の勧めなんか聞かねえぞ! 「お酒強い子、好みやなあ」 さり気なく反対側の肩に手を置かれて、モヒートのミントな残り香がふわりと匂い立つ。 (ムカつく) 血色の悪い幽霊かと思っていたら、明るい所に来てみれば色白の色気が半端ないただのイケメンだったし、周りがチラチラこの男を見ているのがわかるし、この男はそれに慣れているようで全く気にしていないようだけれど、こちらは遭遇したことない居心地の悪さを感じていて、それより何よりコイツに狙われているという事態に睨みつけることしか出来ない。 「なあ、今夜のご予定は?」 「それ聞いてどうすんの」 「この流れなら理由は一つしかないやん?」 ミントの葉をぱくりと食べて、一気に飲み干すその喉をじっと見つめて。 (何見つめてんだよ、こんなナンパ野郎にフラフラついていくような男じゃねえだろ、僕!バカか!) そう思いながらも目が離せないのは、やっぱり寂しいとか。人肌恋しいとか。優しくされたい、甘やかされたい、とかいう女々しい自分が奥底にいるとわかっているからで。 (……一回だけならいいかなあ、) そう思ってしまっているのは、この男がイケメンで、ぶっちゃけタイプで、どんな形であれ僕に興味を抱いているようだから、であり。 (そして、僕はそんな言い訳をしながら酔った勢いとやらを理由として使おうとしている) たかだか数杯で酔わないけど、今夜ぐらいノッてしまってもいいんじゃないかと。 「実は乗り気やろ」 ふふ、と鼻で笑われるのはやっぱり腹が立つけど、伏し目がちにグラスに視線を落とすその男が気になって。 「やっぱりえぇなあ、君」 ふわりと香り立つミントの香りと少し低くて掠れたその声に、酔いが廻ってきたかのようにクラクラした。

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