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「で、部屋割りだけど、どう決めようか。要望がなければ勝手にきめるけど。それとも、この寮の習わしに従って、こいつは嫌っていうのだけきいとこうか」
「俺は移動めんどうだから、今の部屋希望で」
「俺も」
久河先輩が手を挙げて、嵯峨崎先輩がそれに続いた。
「確かにそうだな。荷物はみんな部屋割り終わってから持ってくる感じか。なら早く決めた方がいいよな。とりあえず、俺は基本的にここに居ようと思ってる。寝るのもここだ。その方が監督しやすいし。だから、一部屋、実質、一人部屋ができるわけだけど、そこを鈴木で」
「ええー」
鈴木先輩は不満をあげた。
「おまえ、去年同室に手出しまくって何回も部屋替えしたんだろ。おまえとは誰も一緒にしないし、まさか俺に手を出すとはおもえないけど」
「三宅は全然いけるよ」
三宅さんは決め顔の鈴木さんを無視して話を進める。
「で、悩んだんだけど、新見、同じ一年の間宮と一緒でいいか」
「はい」
まだ人の名前がうる覚えで誰だっけ、と周りを見回してから思い出す。さっき玄関であった半裸のイケメンだ。
「間宮は、結構手の早い暴力男で評判悪くて、最初に新見みたときは無理だなと思ったんだけど、自分の身ぐらいは守れそうな感じだから。他と間宮を組ませるのも不安だし、新見も一年生の方がいいかなと思って」
「大丈夫です」
「ありがとう。無理そうならここでいてくれたらいいし」
「はい」
三宅さんを安心させるようににっこりと笑った。
「じゃあ、残りの部屋分け。三年生のお二方、葉山と七瀬どっちがほしいですか」
横でわいわいと言い合いが始まった。どっちもほしくないといった風だ。三年生同士で同じ部屋にしたらいいのにと思ったけど、喧嘩がはじまってしまった。
ふーっとこっそりため息をついた。
ふと目があった葉山さんにおもいっきりがんをつけられた。苦笑いを返す。またため息をつきそうになってあわてて口を隠す。幸せが逃げてしまう。
もう部屋に戻っていいのだろうか。さっきすれちがった間宮は兄のことを知ってる風だった。間宮も兄にやられたくちなんだろうか。
結局、じゃんけんで部屋割りを決めたようで、久河さんは葉山さんと、嵯峨崎さんは七瀬さんとに決まった。
リビングで三宅さんと話してると、荷物が届いた。段ボール三箱分、玄関から部屋の前に移動して、中に入ろうとしたけど、扉は開かない。ノックも聞き入れる様子がない。
間宮とどう仲良くなっていこうかと構えたのに、部屋は開かなかった。
「間宮~?」
呼びかけの反応もまるでない。
どうしようもないので、とりあえずリビングに戻る。
リビングにいる三宅さんはおおきなテレビの前でゲームを物色してる。
「まだ、開かないです」
「鍵とかないんだけどな。無理矢理押してみる?」
「それはちょっと」
でも確かに開かなかった。いきなりの問題発生だ。
出鼻で嫌われてることはわかってるけど、締め出しはひどい。ほかに唯一の一年なんだからぜひ仲良くなりたかったのだけども、間宮はそんなことまったく思ってないのだろうか。
それはすごく寂しいし、仲よくしたい。
でも、本人に会えない限りは話もままにならなく、悩んでも現状どうしようもない。
幸いに荷物はあるし、リビングは快適なので気を取り直す。
「ここにあるゲームって使っていいんですか?」
三宅さんの横に座って、最新機種のゲームを触った。
「いいよ」
三宅さんに聞くと、キッチンにいた久河さんが返事した。
「俺のだから、壊さなければ好きに使って」
久河さんはソフトもいっぱいあるよと笑いかけてくれた。
久河さんは物腰が柔らかいし、優しそうなのになんでここに入れられたんだろう。いかにもヤンキーな葉山さんと同じ部屋で大丈夫なんだろうか。
「久河さんは去年から、ここなんですよね? どんな感じだったんですか?」
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