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 久河さんは手に高そうなお菓子を持っている。スーパーには売ってなさそうな個包装の焼き菓子だ。 「殺伐? かな」 「俺も、聞きたい」  手に絡まったコントローラーを持ったまま三宅さんが久河さんを振り返った。 「監督生は今年はあたりだと思うよ。実質、問題起こす不良は間宮と葉山だけだろ。去年は、嵯峨崎と俺以外全員けんかっぱやい不良で、けんかばっかだったから」 「地獄だな」 「ほんと、地獄。しょっちゅう家具とか壊れてたし。今年はだから、家具も買いそろえて、壁紙も張り替えたんじゃない? すげぇきれいになってるから。嵯峨崎がでたら収まるんだけど、あいつ引きこもりのめんどくさがりだから。テレビは嵯峨崎が買った。壊したら弁償させられるから気をつけろよ」  久河さんは横から入ってきてゲームを起動させた。ついた画面は銃をもった青年が写ってる。ガンアクション系らしい。 「今年は俺も楽だわ。三年は嵯峨崎と、七瀬だけだろ。無害だし。葉山は俺にさからえねぇし。間宮も他人に興味ないだろうしな。鈴木はわからん。三宅とみなみちゃんはゲームすき?」 「えっと、あんまりしたことがなくて」 みなみちゃん呼びは気になったけど、渡されたコントローラーを手に取った。  家にいたころは勉強ばかりで、祖父は昔気質な人だったからゲームは買い与えてくれなかった。ゲームはほとんどしたことがない。  しばらくゲームをした。わずかにみたことのあるCMでしかしらない知識はひっくり返った。 「めっちゃ怖い!」 「死月の夜は日本のガンゲーにしては優秀だよねーー」  ドンドンという銃声音がリアルで怖い。僕はゾンビが倒れる度悲鳴を上げてしまって、久河さんに笑い倒された。  しばらくして、片付けが終わったのか、鈴木さんも部屋に入って来た。 「お腹空いたんだけど、飯とかってどうなってんの? あと、風呂。ここ風呂ついてるんだろ。大浴場つかったらダメとか?」 「あぁ、説明するよ。本当は全員集まってほしいんだけど」  タイミングを合わせたように、嵯峨崎さんがリビングに入って来たので集まった。 「いない奴には各自、同室が伝えてくれ。風呂は大浴場を今までどおり使ってもらって構わない。ただシャワー室がこの階にはないから、ここのを使うこと。飯は一応、学食の予約があるから、毎日八食分、七時に頼んでる。いらない時は理由と朝八時までに俺に言って。朝は白米と食パンと卵くらいは用意しとくから適当に。昼も自分であるもん使って弁当作るとかは適当に。冷蔵庫は使っていいけど、とられたくないものは各自名前を書くこと。名前を書いてないものは共用とする」 「他に決まりとかは?」 「八人部屋に人を招くときは、誓約書を書かせること、ぐらいかな? なにか、共用のもので、ないものがあったら俺に行ってくれ。ここの共用口座から買ってくるから」  食事が決まってるので、ここに入れられるときに毎月定額の振り込みをさせられた。ほかの雑費もそれで賄うのだろう。 「去年からあるローカルルールとかはないのか? お二人様」 三宅さんが嵯峨崎さんと久河さんに振った。 「とくには。ただ夜リビングで騒いでると、制裁するから」  嵯峨崎さんはどれぐらい強い人なんだろうか。あまりに制裁という言葉を言いなれてるかんじがする。 「そうだね。ないかな。あぁ、でも去年は私物はあんまりリビングに置かない方がよかった。権力強くないと、壊されちゃうから」 「まぁ、そんな感じで。今年は例年に比べて、今の感じからわかるように、平和らしいから、おのおの節度を守るように」 三宅さんはそう締めくくったけど、平和の基準が迷子だ。  そこにいたメンバーはみんなゆるくはーいと返事をしたから、やっぱり平和なのだろうか。  嵯峨崎さんはコーヒーを入れにきたようで、キッチンに入った。それを鈴木さんが追いかかてる。 「まぁ、心配なのは間宮と葉山だな。二人とも急に爆発系らしいから」 自分は関係ないけどというような口ぶりで、久河さんが謎のウインクを僕にした。  前途多難。ステージ16はまだ幕を開けたばかりだ。クリアできたら、でかいお宝みつかったらいいのにな。そんなものは見つからないのは知ってるけど、よし、と僕は気合いを入れた。

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