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事件 1
とりあえず間宮の近況をしろうと、間宮のいる四組を探しに行ってみた。聞き込みしようと思ったけど、僕がたずねると、みんなにそれとなく距離を置かれた。自分が人間☆新見の弟でハチノス在籍のことを思い出す。二組に東と横尾がいたことは本当にありがたいと気づく。
このまま誰かに間宮のことをきいてもいいのだろうか。僕が探してるってうわさがでたりしたら間宮が困らないかなって、思ったけど、間宮もハチノスだった。そういう意味では同類だ。大丈夫だろうと高をくくった。逃げそびれて机に座ってる男に声をかける。
「間宮、来てる?」
「……来てないけど」
無愛想だけど、返事はくれた。
「あんまり来てない? 最近はいつ来てた?」
「今日はまだだと思うけど、昨日は昼から来てた。もういい?」
「うん。ごめんね。ありがとう」
剣のある顔でいわれたので、お礼をいって引き下がる。ちいさく失礼しましたと教室を後にした。
愛想よくしたつもりだけど、全然きいてないみたいだった。風評は厳しい。それでも、耐えれる。兄の行動は僕のためだから、いつまでもかわいこぶってなにもしなかったぼくが被害者になったらダメなんだ。
ふらふらと間宮を探した。前見た別棟の廊下も歩いてみたけど、見つからない。
間宮はクラスには絶対なじめてない。四組は僕のいる二組より殺伐としてる感じもした。本人が平気な顔でも、だれからも無視されるってつらい。寂しいと人間って死ぬと、僕は心から思う。赤ちゃんはお母さんに話しかけられないと死ぬって聞いた。
教室でも一人で、寮の部屋には帰れないなんて辛すぎる。
やっぱり、結局は間宮が帰れない部屋にしてしまったという申し訳なさに戻ってしまう。間宮は僕を締め出したけど、僕を困らせたいわけじゃない。ただ、僕そのものをさけていたのだ。理由はわからないけど、嫌いだとか、憎いとかそういう理由じゃない。部屋はいつだってきれいで、僕の私物は触られずそっくりそのままで置いてある。じゃあ、その理由ってなんなんだろう。
このままでは間宮は帰ってこない。これから暑くなるっていうのに、外でふらふらさせたらかわいそうだ。閉めだされてもいいから、なんとか帰ってもらわないと。
休み時間に依田を捕まえることができたから、間宮の靴箱をどこか教えてもらった。靴箱に名前の表記はないけど、基本的に出席番号順だから、調べればすぐわかる。依田は携帯をいじってすぐに割り出してくれた。
「まじで? ラブレターじゃん」
「そうだよ。初めて書いたから……読んでくれるかな?」
ちょっとブリッコな感じで行ってみたら依田はつぼったようで、笑い転げた。
会うことが絶望的なので、手紙を書いた。言葉で話せなくても手紙なら読んでくれる可能性はある。普通に恥ずかしい気持ちもあるけど、依田が一緒に入れに来てくれることになったので、勇気を振り絞る。でも応援なんて、余計にラブレターみたいで、恥ずかしいかもしれない。
休み時間が終わりそうなぎりぎりを狙って、人がいないことを確認して、こっそりと靴箱に入れた。間宮は靴箱に鍵をしてないから助かった。外靴があるので校内にいるみたいだ。これで帰るときに気づくはずだから、大丈夫だろう。
「間宮こういうの読まずに捨てそ」
「いや、間宮は読むよ」
僕の謎の自信に依田はいぶかしげな顔をした。
読んでくれる確信があった。間宮は几帳面だ。部屋は整理整頓してるし、勉強もできるし、急に殴りかかったりしない。小説も漫画も好きだから、文を読むのが億劫でもない。それに、過度に人を避けるってことは、それだけ、人に対して意識があるんじゃないかとも思う。
手紙にはこの前の謝罪と、でもお前も悪いってことと、一回話そうってことを書いた。互いが苦しくない方法をかんがえよう。だって同室になったんだから。できれば早めに、今日にでも、連絡がほしい。最後には携帯の番号とメールアドレスを書き添えた。
携帯に知らないメールがあったのは、放課後だった。依田と一緒に残って課題をしていて、ちょうど帰ろうとしていたころだ。部活にいった依田を見送って、急いで玄関に向かった。
メールは今までさけてて悪かった。体育館裏に来てくれと、表示されていた。
体育館裏には僕一人だった。そういえばこんなところにくるのは初めてだ。そもそもここは本来なら立ち入り禁止でロープが張られていた。不良ならそういうところに呼び出しもあるだろう。僕は人気のないところでひとりつったっていた。
足音がした。
うかつなところがお前は駄目なんだと、そういえば僕はいつも兄に言われていた。
そう、うかつなのだ。僕は後ろからきた誰かにはがいじめにされて、目隠しをされ布をまかれ引きづり去られてしまった。
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