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 顔に黒い何かをまかれてどこかにひっぱりこまれた。わずかにしろぽかった感覚がくろくなって、室内に入ったんだということがわかっった。羽交い絞めにされた腕はなにかでくくられて動けなくなった。かび臭いにおいがするから倉庫なんだろう。人の声がなんやかんやと聞こえた。みんな乱暴者のようで荒々しい。  やばいなと思った。まさか校内で殺されることはないと思うけど、何かしらのケガはおうだろう。 「で、どうすんの?」 「べつに、気が済むまで、ボコるだけ」  僕は床に投げられた。コンクリートに腕をぶつける。痛いけど、歯をくいしばって声を出さないようにする。 「とりあえずぼこって、脱がせて、かわいそうな写真とっとこうぜ。新見が出てきたら送ってやろう。それでおどしてもいいわけだし。誰か、男でも行けるやついねぇの。ヤってから撮ったほうが効果あんだろう」  何人かの声があがる。そういえば、ここの男子校は男も行けるやつが多いと聞いたことがある。 「新見ってさ、弟と仲良かったの。前から思ってたけど、悪かったら逆効果じゃね」 「よくても悪くてもこいつは腹立つけど。兄貴が入ってるのに自分はのうのうと暮らしてて」  ガっと背中をけられる。複数の声がする。何人がここにいるんだろう。  この状態でまさか反撃なんてできるわけないし、そもそも技は持ってても力は弱いのだから、こんな人数に立ち向かえない。つよぶってみせても所詮猫だましなのだ。  あまり遠慮のないけりがはいってえずく、自分のだえきが顔に覆いかぶさる布にしみて気持ち悪い。 「溺愛って話だよ。一回、弟を拉致ったチームの総長、今でも入院してるって話」 「三内のストリートデーモンだろ。あそこのチーム今でも立ち直ってないしな」 「へぇ、じゃあすげぇやりがいあんじゃん」 ぐりぐりと手の甲を踏みつけられた。節々が痛い。  がんと腕を誰かが踏んでそれを合図のように暴行が始まった。三人ぐらいの人間にサッカーボールのようにけられてる。なんとかうずくまって衝撃に答えてみるけど、痛すぎてすぐにでも意識が飛びそうだ。どうなったらおわりかわからない。気が済むまでっていつだろう。あぁ、でもこの後、おかされるんだっけ。  えずいて、唾液をだらだら出した、吐きそうだけど、吐くこともできない。息つくひまがない。  このまま助けは来ないのだろう。いつも助けてくれた兄はもういない。でも、逃げないと、僕はともかく、そんな暴行の後の写真を兄に送られたりするのは困る。直情な兄はすぐに怒るだろう。兄がまたつかまるなんて、もう嫌だ。  だからといってどうにもできず、でも意識は落とすまいと踏ん張る。 「お前は、はいんねーの?」 「うっせーよ」  ひどい声と暴行の音の中、唯一知ってる声がそこで聞こえた。  その声はとても不機嫌な声色だ。 「なんか、部屋であったかー?」 「死ねよ」 「はぁーー?」 そこで、自分の音ではない殴られる音が聞こえる。殴り合いが始まったようだ。 「やめとけよ。せめーんだから、あばれんな。なにおまえ、こいつなぐれねーの?」  いったん、暴行が止まった。近づく、足音がする。  がっと強くけられた。今日、一番強いけりだ。 「そんなわけねーだろ。というか、しゃべらせるなや。ばれんだろ」 「写真とるべ、大丈夫だろ」 「なにが、気に入らねーんだよ。おまえ、新見、すげー嫌いだっただろ」  口論になっている。このあいだ、あたらしい痛みは増えないけど、じんわりと体が熱を持っていて、全部が痛い。ぬけだしたりとかできたらいいけど、当たり前にそんなことはできない。 「別に」 「そんな態度だから、一人だけ、はぶられてんだよ。だせーー」  強めのものにあたる音がした。とんだ気配はないから、壁か戸だろうか。特攻隊長と聞いていたけど、ほかのメンバーの人と確執があったのだろうか。そんな憶測を自分は実は余裕のあるのだと自分に言い聞かせるためにも考える。現実逃避をしようとするけど、その少しの頭の運動がだるい。けど、なにも考えないと意識がゆるくおちそうだ。ふっと意識が遠のいた。  その時、扉があく音がした。鍵とかどうなってるのかわからないけど、乱暴に戸が開いた音だとわかった。さっきまでの黒っぽい視界が白になる。 「なんだ!?」 「なにしにきたんだよ、てめー!」  どうやら誰かがが来たらしい。中の人たちがみんな、なにやら声を上げている。 「待てや!」  扉を開けた人が戸を開けてすぐ逃げたのか何人かがおったようだ。追うあたり風紀ではないのだろう。さっきまであった人の気配が急になくなる。入ってきた風がやたらとさわやかに熱をもって傷ついた体を撫でた。 「おい、逃げようぜ。このままだと、誰か来る」 誰かが僕じゃない、でも僕の方向に話しかける。 「お前が、何か、証言しても、誰がしたとか証拠はないから。口割るんじゃねーぞ。話したらどうなるか覚えとけ。新見の弟じゃ風紀は動かねぇだろうけどな」  これは僕にだ。声の後、すぐに足音がした。逃げたのだろう。 助けに来てくれた人が誰かに連絡したらこ、こにいては見つかってしまう。大勢の不良が追っかけたらそれだけでも野次馬がうろつくかもしれない。通報のリスクはあがる。  一般人への暴行には風紀はかなりいろいろ厳しいらしい。いくら新見の弟でもこの状態だと明らかに被害者だ。さすがにけんかだとは思わないだろう。    でも、話しかけられていた男は、逃げずにそばにいた。

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