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仲良くなるには? 1

「あれからどうなったの?」  朝、開口一番に依田にそう聞かれた。いつも登校は遅めの横尾も今日は早くに学校に来たようで、依田の後ろで挨拶をした。  翌日は起きたら、いったん寝た作用なのか、体中痛くて一日休ませてもらった。病院にも一応行ってきたけど、別状はなかった。やたら効くシップをいっぱいもらったので、制服の下はシップだらけだ。病院にいきそうにないの間宮の机の上にも置いといた。  事件の夜、扉を締まらないようにした後、僕は自分と間宮の分の食器をリビングに持って行った。  みんなご飯を食べ終わったみたいでリビングにはいつものとおり、久河さんがリラックスしてて、ほかに鈴木さんと珍しく嵯峨崎さんもいて、そろって映画を見てるようだった。  三宅さんはもう食器を洗い終わるとこだったけど、ついでと洗ってくれた。横で洗い終わった食器を拭く。拭いた食器は台車に並べると、一食だけ残っていた。 「これは七瀬さんの分ですか?」 どっちだろうと、思ったけど、かけてみた。 「あぁ、そうだ。今日は帰るっていってたな。朝まで一食も持ち越さないのは初めてだ」 三宅さんはうれしそうだ。食器を揚々と洗っていく。 「葉山さんも食べたんですね」  俺が間宮と部屋にいた間に葉山さんは帰ってきたようだ。 「まぁな、帰ってきたとき、俺キッチンで水、飲んでたから誘ったらふつうに」 「どんな感じでした?」 「別に普通。葉山って田舎のヤンキーだからな。ここのメンバーなんだかんだで根はヤンキーだし、楽しい食事だったけど。みなみがなんとかしてくれたらしいな?」  まったく想像できないけど、誰も逆らえない嵯峨崎さんもいるし、ここのメンバーはみんな変わってるから、変につんつんするのも馬鹿らしくなったのかもしれない。 「そういうわけでは」  すごい雑な説明を久河さんがしたのだろう。 「まぁ、とにかくよっかた。家でごはん食うぐらいには落ち着いたってことだろ。葉山はブラックナイフ抜けるって言ってたし、元不良のよしみで久河が面倒みるだろ。間宮も今日、一緒に食べたんだろ? 様子みてやってくれ。フォローはこっちでもいれるしさ」 洗い物を終えた三宅さんはにかりと笑った。  部屋に戻ると、間宮は小説を読んでいた。  入ってきた僕のことは無視だったけど、間宮がいるのに、入れたってことは、もう間宮は僕を避けることはないだろう。扉の半分は開けたままで、僕は宿題を始めた。  ざっくりと間宮が見つかった話と取引した話と、その後がとても平和だった話をした。  東と依田は拍子抜けしているようだ。 「葉山とはまだ会ってないんだろ?」 横尾は厳しい顔をしている。 「そんな動物じゃないんだから、いきなりとびかかったりしてこないよ。部屋で暴れたら嵯峨崎さんが黙ってないしさ」 「葉山はグループからぬけたのは本当なの?」 依田がそう言った。携帯を瞬時に構える。 「うん。本当っぽい。葉山さんは今のグループはあんまり好きじゃない感じだったし。三宅さんも久河さんも葉山さんは陰湿なやつじゃないって。もう問題なさそう」  横尾はほんとかよと信じてなさげだったけど、僕は確信していた。 「おひとよしだな。まぁ、お前がそれでいいならいい。でも次になんかあったら連絡しろ。風紀の番号とかも携帯に入れとけよ」 横尾はそこで笑って、僕の頭を小突いた。かれはこういうところが男前だ。 「じゃあ、もう一件落着か。全部、公にはしないの? 記事にできそうな話ある?」  依田はブラックナイフは、戦力を失うし、これからどうなるんだろうなと、チームの情勢が気になるようだ。 「うーん。僕は風紀に何も言わないって条件で間宮離してもらったし、話せることはないかな……。あっ、でもブラックナイフの今の総長の統率力がないとか、前の総長派がどうとか、そういう話は葉山さんと久河さんにちょっと聞いた」 「ありがと! ございます!!」  話せることはほんのすこしだったけど、依田はそれでも満足だったようだ。そもそも依田のところの新聞は事実は書くけど、ゴシップ系はあまり書かない。 「間宮はどうなんだ? あいつなんで、みなみのこと助けに言ったんだろうな」 「そうだよね」  それは本当に謎だった。あまりにも助ける理由がなくて、本当に偶然かもしれないと思ったけど、倉庫前のいかにも怪しい人にけんか売りにいくようなやつでもない気がする。 「間宮って、中学からそ血の気多かったの?」 依田は少しだけ考える。 「んー、間宮って中学からの寮生なんだけどさ、同室のやつ、殴ってんだよね。立て続けに。だから初めの印象はなんか怖い奴いるって感じだった。結局一人部屋にいって、それからはめだった問題はないはず」  わけもわからずなぐられた同級生はかわいそうだ。そのころから間宮はあの恐怖症が発症してたんだろう。 「中学は全寮じゃないから、お金で部屋、一人か二人選べるんだけど、同室が気にいらないなら、最初から一人選んどけばそんなことにならなかったのかもな。まぁ、そういうことがあったから、みんな遠巻きに見るみたいな感じで。俺たちの学年は地味で、はぐれ狼もあんまりいなかったし。学校に来てないのに成績いいし、顔もいいしで、とにかく目立ってたからからまれることは多かったみたいだけど。同室のやつ以降は一般人への目立った暴力沙汰もなかった。だから、ハチノスに入れられたのも、同室を殴ったっていう事件が大きかったんだと思う」  むかしは、殴っていたのか、そこから考えるともしかしたら成長したのかもしれない。  間宮についてわかったのは、目が合ったやつみんなぶったおすような怖い男ではない。散歩して、怪しい人がいたから倒すような正義をもつような男でもないし、たまたま同室だった男を助けるような優しい奴でもない気はする。  依田は話してる間、思い出すそぶりをする中で、僕をちらちらと見た。 「なに、ほかにもなにかあるの?」  間宮は待ってましたという顔で、でも声は極めて細めた。 「間宮は、TNGに所属してたってうわさがあったんだ」

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