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 みんな食べたいものをどんどん取って食べる。さすが男子高校生で、机にいっぱいの料理もだんだんみんなのおなかに収まった。メインの肉とサラダやスープは片付けて、ぐだぐだ話しながら魚とオードブルを食べて時だった。横尾が食堂の端の方で一人で座る間宮を見つけた。 「あいつは部屋で食ってないの?」 「うん」 ちょうど食堂がすいてきたころだった。僕たちもせっかく誕生日で豪勢な食事だからゆっくり食べようと人が少ない遅めの時間をねらってきたから、時間がたったいま、人はさらに少ない。 「一人で、こっちで食べるって交渉したみたい」  間宮は食事がどうなってるのかハチノスでの制度はしらなかった見たいで、この前に僕と一緒にご飯を食べたときに僕が話してはじめて知ったそうだ。食堂の中で三宅さんを待ち伏せして、ここで食べる許可をもらいにきたと三宅さんから聞いていた。だからいま、三宅さんがもってくる台車は七人分の料理を乗せてくる。 「でも、葉山は一緒に食べてるんだろ?」 「うん」  葉山さんも今では一緒に食べてるから、余る料理はない。葉山さんはいまではいつものメンバーだ。  ぼくと葉山さんの席は一番遠い。一緒に話すこともほとんどないけど、もう慣れた。少しの間、因縁のある二人だから、久河さんがもめないかと楽しみにしてたみたいだけど、そんなことはおこらない。もともと僕は葉山さんへの怒りはない。負けた方が、引っ掛かる方が、悪いのだと、もと軍人だった祖父に死ぬほど言われたからか、もう普通に生活できてしまえば忘れたことだ。  なにごとも弱い奴は駄目なのだ。強くなるか、強い奴を味方につけるしか、生き延びるすべはない。 「そんなリンチにあったやつと同じ食卓につくとか、無理だわ俺」 横尾は信じられないといった目で僕を見てる。 「そうかな? 横尾は案外、次の日とかもう忘れてそうだけど」 「わかるーー」 僕の言葉に依田が笑って乗った。指さされた横尾は否定できないようで、口を曲げた。 「でも、みんなもめてるってことは知ってるんだよね? そんな寛容なメンバーでも間宮は一緒に食べないんだ。わざわざ、ここまで食べにくるより絶対楽なのに」 「はずかしいんじゃねぇの。一匹オオカミの不良がみんなでご飯とか」 「そういうもんかな」 東と横尾が推察しながらオードブルをつまむ向こうで間宮はひとりご飯を食べている。  部屋で食べるほうが絶対楽だ。三宅さんが持ってきてくれるから、席に着くだけでいいし、ご飯もあったかい。食器もあらってもらえるし、三宅さんさまさまだ。  三宅さんはそういうこまごました家事を嫌がらない人なので、リビングもいつもきれいだ。休みの日は、ついでに掃除機をかけて切れたり、シーツを洗ってくれたりする。三宅さんがそういうことを嫌味なくするので、ハチノスの人はみんな三宅さんの言うことには従う。今、あそこの関係はとても良好だった。本当にすべておいてあたり年なんだと思う。 「間宮はそういうプライド高くないよ」 遠くで一人で食べる間宮を見て、ポロりとこぼした。 「ええーー、そうか?」 依田がまっさきに疑問符をあげる。 「ないってことは、ないよ。でも葉山さんよりはないと思う」 「それはわかる」  葉山さんはいかにもヤンキーなので、不良なプライドやカッコつけたがりだ。髪もつんつんで服も派手で、いつも威嚇してる。でも、いま部屋ではおとなしい。今の甘やかされた部屋って居心地がいいんじゃないだろうか。衣食住はそろってるし、ゲームもある。どんだけぐうたら過ごしても怒る人はいないし、部屋の出入りも自由だ。一緒に住む人はみんな訳ありだけど、別ベクトルで、他人にある程度無関心だから、気をはる必要もない。 「葉山さんよりは間宮、不良じゃないと思う。まずまず勉強できるし、真面目だし」 そうだ。愛想はない美形だから、勘違いされやすいだろうけど、かれはほどほどに真面目で、映画や漫画や本が好きな文藝系だ。すべての元凶はあの恐怖症のせいなんだ。 「確かに俺が話した時も、無愛想だけど、つんつんした感じじゃなかったな。対人恐怖症とかあるのかもな。ふれるな危険って場所があるんだろ」  そういう風に間宮をみながらぐだぐだと話していたけど、間宮は一向にこっちには気づかなかった。前を見てご飯を食べる。姿勢はきれいで、一定だ。 「遅くなったな、もう解散するか」 時計を見た横尾は言った。机の上のご飯は全部なくなった。この後、一度解散した後は、東の部屋にもう一度集まることになっている。明日はやすみなので、泊まるようだ。おたのしみにケーキを依田が今日、街までいって買ってきてくれている。 「ごちそうさまでした」 手を合わせて、解散した。食堂なので、食器を返しに行かないといけないけど、人が少なかったので、机をふいてまわってるおばちゃんがいっしょに下げてくれた。 「ごめん。ぼく、ちょっと」 おばちゃんを横尾が手伝って、それを待ってる時に間宮が立った。 「どうした?」 依田が言ったけど、僕はまた後でと、手を振った。  毎食、こんな広い食堂で彼はご飯をとっているのだろう。ここの食堂はテイクアウトができるから一人で食べる人は少ない。それでも間宮はグループで談笑する机の中で、一人で座り、いい姿勢で食べてる。ここに来る前の僕なら同じように食べれたかもしれない。一人で食べることが普通だった。でもこんなにもおいしいご飯を一人だけで食べるのはむなしいって、ここにきて知った。だれかと一緒に食べる。間宮にもそういうことが、幸せなことだって、僕は教えたい。  食堂は大きいけど、廊下はせまい。間宮の境界線はわからないけど、用心のため、建物のそとに出るのを待った。朝市から寮までは徒歩五分くらいある。学校の施設全部が森の中に立ってるので、平地が少ないのかすぐ隣に建てるということはできなかったみたいだ。 「間宮!」 建物をでてすぐに声をかけた。

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