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 学校はいつも誰かと一緒に、できるだけ早く帰る。東はいつも引っ張りだこで、依田は部活なので、横尾と帰ることが多い。早く帰るのは、早い方が人が多いからだ。帰ってきたらまず僕はまず台所にいってお茶を飲んで、お菓子をもらう。そのあとは、リビングで過ごすことが多い。大概三宅さんや久河さんがいてテレビを見たりゲームをして過ごす。  でも今日は、部屋に戻らないといけない。テスト一週間前だ。  リビングで勉強すると、ほかの人がやたらと邪魔をしてくるのは、中間で学んだ。そんなに邪魔してくるのだからさぞかし、余裕なのだろうと思ったら、邪魔の筆頭の久河さんも三宅さんも普通以下とのことだった。人の勉強の邪魔をしてる場合じゃないと思う。  甘いものがほしいので、適当につかんで、お盆はないからお皿に入れた。  お菓子はみんなよく食べるので、回転が速いけど、嵯峨崎さんの和菓子ブームの中で、生八つ橋がみんな苦手らしく残っていた。僕も好きではないけど、賞味期限もあるからつまんで乗せる。  緑茶をいれてお菓子の準備は満タンだ。 「よし、がんばるぞ」 気合いをいれて部屋に入ると、いつのまにか間宮が帰ってきていた。机に向かっている。 「間宮、おっす」 気合をいれてるところを見られてしまった。恥ずかしくてあいさつでごまかしたけど、顔を背けられた。  間宮は実に不定期で、いつもどこにいるのかわからない。でも最近は部屋にいることも多い。  間宮はいつものようにベッドに寝転んでいるのではなく机に向かって勉強していた。勉強するときもベッドに半裸で寝転んでるのに珍しい。服も今日は来ている。 「なに?」 ずっと見てたのを気にしたようだ。 「いや、勉強してるなって」 「なんだそれ」  間宮は呆れた顔をしたけど、返事した。教科は数学だ。 「間宮、これ食べる?」 「なに?」 「八橋」 「なんで、そんなんあるんだよ」  そこで、間宮はすごくわかりくくはあるけど、笑った。間宮は顔の作りがかっこいい。だからこそ無表情だとちょっと怖いけど、笑うと本当にかっこいい。不意打ちにどきっとしてしまった。イケメン好きな横尾じゃあるまいし、とりなおそうと、軽く咳払いをする。  間宮に皿を差し出すと、間宮は八つ橋に手を伸ばした。三角の端をつまむと、大きく口をあけて一口で食べてしまう。 「初めて食べた。なんだこれ」 べろりと唇についた粉をなめる。 「八つ橋は京都の銘菓。にっき味だよ」 「それは知ってる。そもそものにっきってなんだ」 そういいながらもう一っこつまんで、でかい口で食べる。気にいったらしい。 「なんだろ」 ほんとうになんだろう。考えてみたけど、予想もつかない 「なんで、その京都の銘菓持ってんの? おみやげ?」 間宮はニッキのことはどうでもいいようで、さらに疑問をぶつけられる。 「嵯峨崎さんが買ったお菓子。嵯峨崎さんお菓子好きでいつも通販で買いすぎて余ってんの。それがキッチンにあるから、好きに食べていいんだよ。今、和菓子ブームらしいんだけど、八橋めちゃくちゃ余ってるから、好きなら食べたら」 「そんな制度あんの? 知らなかった」 そうだろう。でも他のみんなは知ってることだ。 「間宮って、そもそもリビングにいったことないんじゃない? もったいない。嵯峨崎さんのお菓子絶対におししいのに。損だよ」 本当にもったいない。お菓子もそうだけど、紅茶もコーヒーも全部絶品なんだ。嵯峨崎さん様様である。 「勉強、甘いものほしいでしょ。取りに行こうよ。飲み物もさ。カフェインもとろう。八橋余ってるけど、ほかにもつねにクッキーかチョコはあるから」 間宮はちょっとひいている。僕の勢いに押されているといえる。 「甘いものきらい?」 「好きだけど」  間宮は手を止めて剣のある顔をしてる。でも僕に敵意があるわけじゃない。もう間宮との会話に慣れてきている。すぐに顔をしかめて不機嫌な顔をつくるのはくせなんだろうか。でも慣れてしまったら、怖くもないし、遠慮もしない。 「いま、勉強そんなに忙しい? 取りに行くだけだし、頭を働かせるなら糖分取らないと!」  間宮がベッド以外にいるのもめずらしい。寝の体制よりか座ってる体制のほうがまだうごいてくれそうな気がして積極的に押してみた。 「いま、八橋食べたばっかだけど」  間宮は怪訝な顔を崩さないけど、話を中断するようなことはない。ちゃんと聞いてくれている。 「そういえば、三宅さんに夏休みのこと言った? ついでに言いに行こうよ」 あー、と間宮は声をはいずらせた。

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