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 週刊天白が発売され記事が出た。今学期一発目の記事だ。運のいいことに一面は他の記事が載り、僕の記事は二つ目に大きいものだった。僕と間宮が並んでる写真に、新見弟は兄と面会!! 間宮と親密な関係、幻となったTNGの復活か?! と銘打たれている。僕が兄に会いに行った事実に、兄は院に入れられたことを恨んでいること、秘密裏に僕が元TNGだった間宮に打診をし、TNGを復活させ、兄の報復をはかろうとしているという嘘が織り交ぜられている。  晴々新聞も発売されて、僕が兄に会いに行った記事を掲載していた。新見美波は兄の面会に行いってはいるが、たわいもない話をし、新見広海は行いを悔い、反省し過ごしている。もちろんこっちが本当だ。  僕は横尾と一緒に登校し、教室に着いた。クラスのみんなは遠巻きに僕を見てるけど、そもそもまだクラスメイトと打ち解けきってはいない。  晴々新聞も週刊天白も発行部数は大きくは変わらない。どちらの記事も話題性が大きいもの、注目されるものに準じて、生徒が知ることになる。大きいネタに関しては一瞬に広がり長期にわたって話題に上がる。 「クラスは大丈夫なんじゃねぇか。一緒にいる俺も東も依田も不良の争いとは関係ないし」 「そうそう。もともと週刊天白って眉唾の記事もあるから、まともな人間は信じない。信憑性は圧倒的にうちの方があるから、あんなの嘘だって堂々としてればいいよ。一面にもならなかったし」 横尾は気楽に、与田は必死に慰めてくれた。 「みなみは本当に温厚なんだから。もうそれぐらい、クラスの人もわかってると思うよ」  東は大きくはないがよく通る声で言った。クラス中に信頼がある東がこう言ってくれることで、牽制と、僕が危険じゃないことをアピールしてくれている。  友達の存在がありがたい。いままでこんなに友達の存在が大きくなったことはなかった。 「で、間宮は家でおとなしくしてんの?」 僕は首を横に振った。 「間宮は、普通に過ごすって。そんな記事が出たからって、家に引きこもるのは、ばからしいし、記事が出たから家にいるじゃ、メンツに関わるとか。学年上位のガリ勉の癖して、不良気取って、ばっかみたい」  思い出すと、いらいらしてきた。本当にばかだ。不良でいたいんなら、勉強なんかすんなっていいたい。職員室に聞きに行くぐらいの真面目なのに、何を気にしてるのか。 「まぁ、予想はできてたけどな」 「今日も、僕より早く外に出ちゃったし。部屋にいないときはいつもふらふら空き教室で適当に過ごしてるみたいなんだけど、それなら部屋でじっとしてればいいのに」  今、この間にも間宮になにかあったらと思うと怖い。さすがにまだ朝だから新聞も出たばかりで情報も回ってないけど、放課後までには全校生徒が知ることになる。 「もし、なにかあるとして、どこから来るんだ」 「ブラックナイフと、とその他不良」 与田は素早く答えた。 「あってない答えだな」 「実際そうとしか言いようがない。まったくなにもんないってことも、もちろん考えられるよ。美波に関しては意外と大丈夫だと思う。ただ、間宮の方は、何せTNGっていう看板がでかいから、なんでもいいからいちゃもんつけたいってやつもわんさかいるだろうし。風紀も動くかわかんないし」  いちゃもんをつけたいやつがわんさかいるなら大きい釣り針だ。僕の見た目はこんなんだけど、間宮は外見はど金髪で派手で、学校もさぼりがちのヤンキーだ。めざわりだと思う不良がいてもおかしくない。 「まぁ、ブラックナイフは崩壊寸前だし、あと一つ大きいのはひっかからない。その他の不良もチームってほど大きいのはない。数人なら、間宮も自分でなんとかできると思うけど……」  依田がしどろもどろにフォローした。間宮のことは僕を介して知ってるだけなのに、親身になってくれてありがたい。  週刊天白の記事を読む。TNGもそろそろ血にうえてきたろころだという記事は全部間違っているって知ってるのに、すごく信憑性があるように感じた。兄はもう帰ってくる気なんてない。むしろこれぐらい兄の気持ちがあればいいのに。僕は決してTNGを集めて復讐なんて考えてないけど、会えるならTNGの人たちに会って話が聞きたい。彼らは兄のことをどう思ってるのか、築島さんとの言う通り、兄は今でも慕われているのか、兄に戻ってきてほしいと思ってるのか、その気持ちがあるなら、再結成はしなくていいから、みんなで兄を迎えてあげてほしい。帰ってきてと呼びかけてほしい。そのためならTNGを再結成のため声をかけてたい。  間宮は、きっと戻ってきてほしいって言ってくれるだろう。会いたいってあのまっすぐな目で言うだろう。なぜか、胃のあたりが気持ち悪くなった。間宮の目を思い出す。TNGへの忠誠心を思い出す。それは兄への思いで、嬉しいはずなのに。兄が帰ってきたら、間宮が僕を見ることはあるのだろうか。  兄と僕は母似で童顔の同じような顔立ちだ。兄のほうが背も高く体つきもいいけど、大きくは変わらないとか。嘘だ。兄のほうが数段かっこいい。僕は女々しい劣化品だ。兄を知ってる人で僕のほうがいいなんて言う人なんてきっと現れない。 「みなみ、大丈夫か? 顔色が悪い」 「大丈夫」  兄に嫉妬なんて馬鹿みたいだ。いまはそれどころじゃないのに。

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