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ghost10

  芥川は固持したが、とても外ではできる話ではなかったので、木村の部屋に来てもらって、落ち着いたところで全てを聞いた。 「何だよ。お前は俺に嘘ついてばかりじゃないか」  木村は怒るというよりも、 ふて腐れながら言った。事情が事情だけに言えなかったのだろうから、強くは出られない。 「ごめん。お前を巻き込みたくなかった」 「それこそ、水臭いな。でも、なんで急に話す気になったんだ」 「それは……っく……」  言い淀んだ芥川が、突然呻き声を上げる。 「芥川?おい、まさか例の発作か」  心配して駆け寄ると、苦悶の表情を浮かべていた芥川が、徐々に落ち着きを取り戻してきた。 「良かった。やっぱりお前、病院にーー」 「その必要はねえよ」 「芥川?」  突如として声の調子が変わり、表情も別人のように変わった。唇を歪めて、悪巧みをしている顔つきだ。こんな芥川は見たことがない。 「お前、誰だ。芥川じゃないな」 「何だよ。話をちゃんと聞いてねえのか、お前。俺様はこいつが今利用しているサービスの霊ってやつだ。ついでに、以前お前についてたのも俺様。『強くて怖く、知識も豊富』だからな」  得意気に鼻唄でも歌いそうな調子で話す芥川、もとい、「強くて怖く、知識も豊富な」霊。タクトという名前だったか。 「なんか芥川の顔で喋られると変な感じだ」 「とか言いながら、お前何だよ。爛々とした目つきで近付くな」 「とか言いながら、タクトも何か顔赤いぞ。照れてるのか」 「は?ああ、体は芥川だからな。条件反射というやつだ。気にすんな」  そういうものだろうか。近付いてつついてしまいたいほど、好奇心が抑えられない。 「やめろ、近付くな。お前、綺麗な気を纏っているが、ちっと俺様には強すぎんだよ。引っ込めろ」 「何それ。俺ってなんかすごいの?」  木村が輝くような笑顔で尋ねると、タクトは呆れたように言う。 「自覚なしで、聞かされていねえんだな。お前は霊感ないとか勘違いしているようだが、それはお前がそういう悪いものを寄せ付けず、払う力を持っているからだ。ご立派な守護霊様をつけてな」  初めて聞かされる自分のことに、驚きが隠せない。芥川はそれを知っていたのだろうか。 「脱線したから本題に戻すぜ。俺様が芥川に力を貸して、見つけ出してやることにしたんだ。芥川の両親を食らったやつを」 「え、何それ。殺したんじゃなくて、食らう?」  ただ殺されるよりも恐ろしいことだ。身震いしていると、タクトは低い声を出した。 「詳細はこいつに聞いてくれ。ただ、お前の力とこいつの力を合わせれば、あるいは可能かもしれねえな。じゃあな」 「えっ、ちょっと」  タクトはそれだけ言うと、目を閉じて眠るように体を傾けた。後ろにテーブルの角があったので、慌てて手前に引っ張り、抱き締めるように受け止める。  高い体温を感じて、勝手に心臓が跳ねた。 「……木村……?」 「あ、気が付いた?」  放心状態の芥川を至近距離から見て、ようやく本人が戻ってきたことを知る。幽霊様もいいが、やはり中身は芥川の方がいい。  にこりと笑うと、芥川は頬を赤らめて視線を彷徨かせたが、やがてぶつかりそうな距離で訊いてきた。 「あいつ、何か言ってたみたいだな」 「ああ。なんか俺の力とか、俺たちの力を合わせたら倒せるとか」 「そうか……木村」 「ん?」  真面目な話をしながら、芥川の腕が背中に回されていく。自分も腕を回していたので、抱き合うようなかたちになっている。気が付くとじわじわと顔に熱が集中してきたが、離れようとは思わなかった。 「真面目な話を続ける前に、キスしていいか」 「いつも勝手にするだろ」  芥川は低く笑い、始めは触れ合わせるだけのものを繰り返し、やがて木村の中を探っていった。木村は呼吸を荒くしながら、自分たちは当たり前のようにこういうことをしているだけで、もうただの友達ではないなと思った。  芥川と唾液を絡ませてもつれ合い、床に転がりながら、互いの体の熱が高まっていくのを感じる。このまま身を任せたいような誘惑があったが、芥川が木村の服に手をかけたところで止めた。 「続きは後にしよう」  芥川は不満気にしながら、嬉しそうにした。 「してもいいんだな」 「……いいから、後でな」  照れ臭くてぞんざいに答えると、一瞬だけ二人して笑ったが、次には芥川も木村も顔を引き締めた。 「芥川、話を聞かせてくれるか」 「ああ、昔話をしよう」

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