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第10話 カーナビ③

 あのカーナビ、やっぱり使えるんだ……。  当たり前のことではあるのだが、友一はショックを受けていた。 「友一? どうした?」  良太に声をかけられ、ハッと我に返る。 「なんか顔色悪いけど、大丈夫か? 友一」 「え? ……あ、うん。大丈夫」  友一は良太に向かって、なんとか笑顔を作ってみせる。  渡り廊下にいる恋人の存在に気づくことなく、剣上の車は女性を助手席に乗せ、カーナビに従って、学校を出て行ってしまった。  友一の不安な心を置き去りにして。 「友? どうしたんだ?」  剣上が心配げな口調で友一に問いかける。 「別に。なんでもない」  友一はリビングのソファーに座って、そっぽを向いたまま素っ気なく応えた。 「なんだかご機嫌斜めだな、友だちと喧嘩でもしたのか?」 「子ども扱いしないでよ」  ムッとして言い返す友一の隣に剣上が座った。  ――剣上の自宅マンション。時刻は夜の九時を回っている。  昼間見た光景……剣上が女性を助手席に乗せ、カーナビに従い、去って行ったことを、友一はずっと心に引きずったままだった。  

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