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第11話 カーナビ④

 剣上は友一と付き合いだしてから一度引っ越しをしている。  友一の自宅に近いマンションへ移ったのだ。  少しでも、二人で過ごす時間を長く持ちたいという理由と、引っ越す前のマンションは高校に近かったので、なにかとリスクが高かったからだ。  付き合い始めて初めてのクリスマスイブに合鍵をプレゼントされた。  友一が大好きなキャラクターのキーカバーのついた鍵を。  いつでも先生の部屋へ行ける……、行ってもいいんだ……。  合鍵を見る度、友一は幸せな気持ちになる。  でも、今夜、剣上を待っているときはなんだか不安でたまらなくなった。  先生、あの女の人、この部屋にも上げたことあるのかな……?  そんなマイナスな気持ちが頭をもたげてきて。  いったん疑心に捕われれ始めると、どんどん悪いほうへと想像は膨らんでいってしまい、剣上を疑う気持ちが大きくなっていく。そして、そんなふうに考えてしまう自分に嫌気がさす。  今日の友一の精神状態は最悪だった。 「友?」  剣上が、友一の小さな顔を両手で包んで、強引に視線を合わせてきた。 「本当にいったいどうしたんだ?」  彼の綺麗な瞳に見つめられ、友一は思わず泣きそうになった。 「……先生、昼間、女の人を助手席に乗せていたよね」 「え?」  剣上が少し驚いた顔をする。 「綺麗な女の人。先生、すごく楽しそうに笑ってた。オレ、渡り廊下から見てたんだから……」  唇をギュッよ噛みしめる友一。剣上はそんな友一の髪を優しく撫でた。

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