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「なんとなく」 「わざわざ名門のエスカレートやめて? たいへんだったんじゃないの?」  もともと成績はよかった。こっちへの入学は何の苦難も障害もなかった。最初から決まってたみたいだなと感じたくらいだ。 「知り合いがいるんだ」 「知り合い? ふーん。どんな人? イケメン?」 「すっげーイケメン。かっこいいよ。からかってやろうと思ってさ」 「イケメンなんだ?恋人?」 依田はこともなげにそういった。 「男同士じゃん」 「この学校多いから、気にしなくても大丈夫」  最後というのは本当だったらしく。依田はそこで質問を終わらした。かわりに俺が質問する。 「こんな男ばっかだと、そういうのもいっぱいいるのか」 「まぁ、下界よりは多いんじゃない?かっこいい男はアイドルみたいになるし」 「下界って」  依田は何かを言いかけたけど携帯に連絡が入ったようだ。顔をしかめて画面を見たけど、片手をあげて教室を出ていった。  横尾は教室を見渡した。教室はざわめいたままだ。いつになったら帰れるのだろう。まわりの生徒はこっちを気にしているようにちらちらみているけど、話しかけては来ないようだ。これをどう判断するべきか。横尾は友達100人つくろうなんて露ほども思ってないので、なるようにまかせるだけだ。新見もいるし、依田は仲良くなったというべきかわからないけど、そこそこ楽しくなるだろう。  依田の狐顔を思い出す。恋人とすぐに邪推されるほど、自分は顔に出ていただろうか。横尾はあごに手をあててみるがよくわからない。自分はなに考えてるかわからないといわれることの方が多いのだけど。さて、愛すべき人は自分を見つけられるだろうか。  横尾がうっかり寝ていたら担任と思われる先生がもう前に立っていた。若い柔和な表情の男性だ。肩から下げたエプロンがギャルソンみたいな足下までの長さのものだった。絵の具がついてるから美術の先生なのだろう。黒板から推測するに、すでに委員会やら係りが決まっていた。もう解散らしい。  帰ろうとしたら、新見が依田に絡まれているのを見つけてしまった。 「横尾君!」  横尾に気づいた新見が目で助けを求める。 「おまえ、もうやめといてやれば」 「あ、ヨコ。さっきぶり! ちょー寝てたね」  依田は横尾の後ろの席なので横尾の寝姿がずっと視界に入っていたらしい。  依田が横尾に笑顔でそう言うと、横尾は依田の頭をはたいた。 「やめてやれば」  横尾はもう一度依田にそう言った。 「ヨコ、以外に暴力キャラだね」 痛い、と依田が頭をさすった。 「新見、飯どうする?」 「えっと、今日は食堂いこうかなと思ってるけど」 「じゃあ、一緒にいかね?」  いくいくと、新見が両の拳を小刻みにをふった。動作がいちいちかわいい。この学校、男でもいけるやつ多いっていってたけどこいつはこれで大丈夫なのだろうか。 「依田は?」 横尾が話しをふると依田は一瞬、顔を輝かせるが、 「俺は用事あるんだ。一緒にいければよかったんだけど」 と言って思いの外、口をすねさせた。 「そんなすねんなよ。またさそってやるから」 「ありがと」  依田は横尾の肩を大げさに感動した風にたたいた。  依田の携帯がけたたましくなって、依田本人がびっくりしている。眉間にしわをよせたけど、じゃあと、急いで教室をでていった。

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