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四人はいつも教室で昼休みをだらだらとすごすが、教室の人口密度はいつも少ない。横尾らの在籍する二組の生徒だけかと思っていたら、この前ほかの教室をとおりがかったらどこも少なかった。みんな外に食べに行くのだろう。屋上も解放されてると聞いたこともある。昼ごはんは屋上みたいなある種の定番があるけど、屋上なんて影のない場所なんて嫌だというか、移動が面倒だというのが四人のなかの暗黙の了解だった。
人の少ない教室を眺めていたら、依田ががさごそと、机の中からいろんな紙を次々と出した。
「1番目に大きいのは部長がやってるBRIDGE。これは学内じゃなくて、一般の国内外のあらゆる新聞をまとめてるやつね。そんで部員は絶対一回はまかされる。二番目に大きいのはそのゲスい系で人数もいる、週刊天白。晴々新聞は副部長がやってて三番目。他はちっさいのがいろいろで、趣味、サブカル系とか」
「どこもだいたい週刊なのか?」
「天白と晴々は週刊。ほかにもあるけど、ちっさい派閥は月刊とか不定期もある。BRIDGEは日刊」
新聞と言っていたが形式は冊子のものもあった。BRIDGEはいつも寮の出入り口に置いてる。晴々新聞は掲示板によく貼っている。他のものはあまり見かけたことはなかった。
依田がいっぱい机のうえに無造作に置いたので一冊が床に落ちた。横尾はその一冊を拾い上げる。週刊天白と書かれたそれは見出しが大きく赤と黄で載り、いかにも週刊誌といった表紙だった。大きく載った写真は会長だ。会長ファン激震! 驚愕発表の謎にせまる! と描かれている。
「最高にゲスいな」
横尾はあきれた目でそう言った。
芸能人でもなんでもないただの学校の会長でこんなにもゲスくかかれるなんてお気の毒だ。でもこの学校には社交界にもう足を突っ込んでる人もいるだろうから、これもしかたないと言えなくはないのだろうか。
横尾はパラパラとページをめくった。
「あっ、これ僕らじゃん」
新見が指をさす。
新見が見ているのは晴々新聞なようでそちらを見ると確かに横尾らが載っていた。外部組一覧と銘打たれて簡単なプロフィールにちょっとしたアンケートと写真が載っている。
「ほんとだ」
「それもまぁ、うちの新聞は基本プロフィールと、取材者のコメントだけだけど、天白はえぐいよ。あ、そういえば美浪、「今週のこの子」って新聞の人が今度取材したいって」
「えっなにそれ」
依田が探し当てたのはカラーの小冊子だった。きれいな男が表紙でまさかのバラを持っている。
「この雑誌は不定期でいけてる男の子の写真集をつくるって新聞。写真部と合同」
依田と新見はなにか言い争ってる。横尾はそれを横目にもってる週刊天白新聞を見るのを再開した。横尾が見るかぎり自分たちのエグい記事は載ってない。たぶんエグい記事が載ってたとしても新見だけだろう。依田も知っていて話をそらしたに違いない。新見はまだ数週間しか一緒にいないがびっくりするほどいいやつだ。どんだけ現実と乖離した記事なんだろうと逆にその記事を見てみたい気もする。
「あっ、そういえば、お前追ってきたやつイケメンっていってなかったっけ?」
突然、そう依田がそう叫んだ。
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