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 週末、四人は外出許可をとって、バス停の前で待ち合わせをしていた。新見が少し遅刻していたけど、予定通りのバスに乗れた。  バスには他にも高校生の乗客がいたが、混んでいるというほどではなかった。 「そういえば、私服、初めてだなー。ヨコは普通だね」 「フツメンは普通が一番に決まってる。そういうお前は派手だな」 横尾はポロシャツにジーンズとスニーカーだ。それに対して依田はサルエルパンツにだらっとしたパーカーを着ている。アジアンなネックレスもじゃらじゃらとつけていた。髪もピンで飾り立てている。 「そんで、東はイケメン隠してた? ってかんじ。なんか委員長イメージ先行してて、いつも感じないのに」  東は灰のテーラードジャケットに下は細身の黒のパンツで、靴も革でかっこいい。以外におしゃれさんらしい。 「そうでもないと思うけど」 「みなみと並ぶとカップル感すごい」  新見は某カバの妖精のTシャツに黄緑の長めのカーディガンを羽織っていた。ジーパンは上げてくるぶしを出している。 「学校でなくても危ない雰囲気が!」  横尾に依田も乗って、うっとおしいカメラマンの真似をしていたら、新見が怒ってそれに他三名は和んだ。 「で、今日の予定は?」  照れたのか、気を取り直すように咳払いをして、新見が依田に聞いた。 「とあえず、最初はバス乗り継いでF町のでかい公園と繁華街の食べ物屋見て、そこからモールに行く。そんで、帰りしなに大学の図書館による」 「大学の図書館?」 「申請したら高校生でも本を借りられて、中で映画も見れるらしい。今日は覗くだけで考えてるけど。メインは外で」 「おでかけ、たのしみだね」 「公園とかしぶいな」 公園で遊んだ記憶を横尾はさがしたけど、もうずいんぶんおぼろげでちゃんとは思い出せなかった。 「なんかでかい公園だから、スポーツしたり需要あるみたい。あと近所に高校がいくつかあるから、そこの女の子がよく通るとか」 「女の子なー。東は、中学のとき、彼女いた?」 横尾は東に言った。 「ちょっとなんで、東ピンポイントで聞いたよ」 「いや、俺そんなかわいそうなことしたくないし。依田、中学から天白って言ったじゃん。いないだろ、彼女」 「中学天白でも、全寮じゃないから、彼女いるやつはいたから」 「お前はいないだろ」 「ぐぬぬ」  依田は押し黙った。そもそも自分から話題にはいって墓穴を掘っているのだからしかたない。 「これからできるよ」  東はさわやかにフォローに入ったが、依田はさらに顔を真ん中に寄せてしわを作った。 「うわー、その反応! 絶対いたじゃん」 「今はいないし」 東は困りながらも依田を慰めている。 「えー。僕、華麗にするーされてるんだけど」 「心配しなくても、美浪は高校で恋人ぜったいできるから」 「恋人って言いかた! 絶対彼氏ってことでしょ! ヨコ、僕のこと、そういう方面でいじりすぎだから!」 新見は顔をふくらませるが、それにいったん全員がほっこりした。 「というか、彼女、ヨコはいたの?」 新見は顔をふくらませたまま横尾に尋ねた。 「いたよ。二人。すぐに別れたけど」 「それって、追ってきたって、男とは別に?」 新見の質問を横から依田が取った。 「そいつは、別に付き合ってはねぇよ」 「そうなの? 片思い?」 「まぁ、そんな感じ。でも報われる前提だから」 「その自信なんだよ」  どうでもいいのに腹立つと、依田は怒った。 「男は気概なんだよ。だからお前は彼女出来ないんだ」 「うへぇ。でも、今は、くっつかないで、離れてる方がいいかもね。その人イケメンなんでしょ。親衛隊とかいたら、やっかいだし」 「なんか言ってたな。なんかしてくるの?」 「アイドルは恋人いたら駄目っていう感覚だね。基本的には、共通の好きな人を持つ人たちが集まるっていうものなんだけど、集団って何かをさかいに、ヒスるし。隊によっては対象者が上手いことして統率とれてたりするけど、そういうことしそう?」 「まったく」 「親衛する人に公認されないとファンクラブって形になるんだよね。ファンクラブのほうが、集団としての塊が弱いから、大きなことは起こしにくいけど、個人個人が勝手に動いちゃうってことはあるね」 「個々が勝手に動くくらいじゃあ、別に大丈夫だと思うけど。俺、丈夫だし」 「あれ? 会う気はまんまん? じゃあ、くっついたら、取材させてね。相手が目立つ男ほどスクープになるわ。マジで期待してる」 「なんか、別の国みたいでおもしろいな」 東は少しあきれたようにため息をはいた。 「自分から下手にあおったりするなよ」  東にのぞき込まれるように見られると、長めの前髪が脇に流れて、すっとした眉があらわれる。こいつやっぱり結構イケメンだなと横尾は思った。 「今度、新しいイケメン図鑑できたらどんな状況か一人一人解説してやるよ。特に美浪は載るかもしれないから聞いとけ」  依田は新見にむかって真剣なかおをした。 「載らないって。みんな、よってたかって僕をかわいいっていうけど、僕、そんなにかわいくないよ。そういうネタ……だよね?」  全員が真剣な顔をしたので、新見は怒っていたのが少し不安な顔をした。 「いや、ほんとに、先にうちの兄の怖い情報で想像してたら、こんなちんちくりんがきたから、みんなかわいいっていうだけでさ」 「俺は新見の兄貴なんてしらなかったけど」 「俺も」 新見をよってたかっていじっていたら、バスが付いたので、横尾らは並んで降りた。

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