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GW 1
ゴールデンウイークが始まった。高校に入ってからの初めての長い休みだ。横尾が周りに聞くとみんな割と帰ると返事をした。中学から寮生だと家族と過ごす時間はかなり少なくなってしまうので、少しの休みでも帰る、もしくは帰らされる傾向にあるようだ。
依田は家が遠く、授業終わりですぐに帰った。新見の実家は近くで休みの初日の昼過ぎごろに寮をでるそうだ。横尾の同室の難波もさっさと帰ってしまった。
東は帰らないが、すでに、クラスメイトから信頼を得てる東は、GWをいろんな部屋で実力テストに向けての勉強会をして過ごすそうだ。大変だな、といったら、自分の勉強になるからと、笑っていた。優等生すぎる。
横尾はせっかくだからと、初日は勉強会に混ぜてもらった。GW明けの実力対策と宿題が片付いたので、満足だけど、明日からの予定がまったくない。
部屋に帰ると夜、遅くなっていた。飯は向こうで食べたし、風呂も入ったから、あとは寝るだけだとベッドに入る。
寝しなに、ずっと部屋に放りっぱなしだった携帯に気づいた。光ってるから連絡が入ってるはずだけど、眠たいしめんどいしで放置してそのまま寝てしまった。
朝、寝坊ぎみで起きた。横尾はすることないなと、冷凍してあったおにぎりをチンして、ぼんやりとすごす。とりあえず、ふとんにダイブして二度寝をこころみるけど、ご飯を胃に入れてしまったからか、眠気はどこかへいってしまったようだ。何気なく二日ぐらい充電しっぱなしの携帯をとった。ひまつぶしにテレビがあればいいのだけど、難波が買って来ないだろうか。
携帯を開けると携帯には同じ着信が2件、昨日の夕方頃にかなり短いスパンでかかってきていた。登録してるから名前は出ている。優しい寮の管理人の前島さんからの電話だ。横尾はあれっと声に出して首をひねった。前島には高校の入学前に少しだけ話をしにいった。その時に、美藤とは絶交中だから、二人のことにしばらくはかかわらないでほしいと言ったはずだ。だから、もうかかってくる用事なんてないはずだった。不自然な着信に横尾は少し首を傾げたが、ある可能性に気づく。かけ直してもいいけど、ちょっと待ってみるのも面白いかもしれないと、横尾は、携帯を手から離した。
急に気分がよくなったよくなったので、勢いよく起き上がった。雑誌でも見に行こうと本屋に出掛けた。
食堂がはいってる朝市にはスーパーや他にも二階に本屋とホームセンターと電気屋と雑貨屋、中古屋が入ってる。中古屋は寮を出るとき置きっぱなしのものをここが買い取ってそれを新入生が買ったりする。テレビもあるけど買うなら難波と折半だからまた今度だ。
通販の受け取りも部屋でなくて一括でここが請け負っている。
「ここ住んでたら出る必要ないもんな」
だいたいのものはそろっているんだから、学校に引きこもりになるやつも多い。土日の朝市はそこそこ盛況だ。そんなんだから、外に出会いを求めず、男に走るんだと、横尾は思った。それでも長期休暇はさすがに人が少ない。いつもよりがらんとした店内をふらふらと暇つぶししながら、本屋に入った。
しばらく本屋でしっかり立ち読みして、通販を受け取り、帰ろうかと本屋を出ると後ろから声をかけられた。
「横尾じゃん! おっす!」
振り替えると同じクラスの島田がいた。
「よっす。お前も残り組?」
島田は体育会系で、どことなく三枚目な感じの男だ。
「そうそう。みんな帰ったし、やることないから暇だわー」
「ああー、わかるわかるー」
島田は電気屋の袋をさげていて、それを横尾に見せるように少し挙げた。
「だからさ、さっきゲーム買ったんだけど、対戦だから一緒にしよーや」
「おっ、するする」
思ってもないお誘いに横尾はのりのりで返事した。
「おおー、まじか」
自分で誘っておいて島田はなぜかびっくりしている。
「なんでびっくりしてんだよ」
「まさか、誘われてくれるとは思わんくて。なんか外部組みんなちょっと近よりがたかったし」
「ええー。東、社交的だし、新見もかわいいじゃん」
横尾は人当たりもいいし愛想もあるけど、自分からは話かけにはあまりいかないので、近寄りがたいと思われてもしかたがない。
「東はともかく、新見は兄貴怖いもん」
「新見いいやつだよ。兄貴は新見のこと溺愛らしいから、友達には危害加えないだろ」
「それはそれで、怖いような? まあ、でもこれで横尾とは仲良くなれそうだ」
「そうだな。よろしく」
島田が手をあげるから、横尾も手をあげてハイタッチした。
実際、友人が増えるのはいいことだ。横尾は積極的に友人を増やすことはしないが、友人はいらないと考えているわけではない。
横尾は島田に連れられて部屋に行った。同室の生徒は帰ったようだが、二人そろってゲーマーなのかゲームがいろんな種類を置いてある。新しく島田が買ったゲームは横尾も昔したことがある対戦ものだった。ゲームは白熱して、そのまま昼食もゲームのお礼につくって食べて部屋に買えったら夕方前だった。
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