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電話の後
横尾は切った携帯を眺めている。
「いち高校生にどこにいるか探せなんて無茶な話だよな。でもだからこそ簡単な答えだと思うんだけど。お前のこと好きなのに離れるわけないじゃん。ばーか」
誰もいないことをいいことに横尾は自分の思いを吐露した。持っていた携帯はベッドに投げた。
まだ声の余韻は残っている。
よく考えれば、一介の高校生がそんな探偵みたいな真似そうそう無理なのだから、そんな難しいところに行くわけないと考えれるはずだ。それが絶対に見つかりたくないのなら話は変わるが、横尾は美藤のことが好きなのだから、見つけてくれないと困る。美藤が横尾の好意に気づいたらすごく簡単なことなのだ。
それでも美藤は気づく様子はない。探すとしたら彼は地元ではだいぶやんちゃだったから、地元の奴らを使って、地元周辺からシラミ潰しに探したりするのだろう。まったくの無駄だ。
美藤は人からの好意というものがわからない。だからこそ、好意を与える人物に無意識に好意を返してしまう。
だから横尾が好意を与えることにより美藤は好意を返す。美藤は実際、横尾に好意を貰ってるなんて思いもしないだろうし、横尾に好意を返しているなんてまったく思っていない。美藤が行為を返してるなんてことは客観的にみてもわからない。でも横尾にはわかるのだ。
それじゃあ、駄目なのだ。横尾は美藤に自分の好意をちゃんとわかってほしいし、美藤が横尾に意識を持って、好意をそのままほしい。このままじゃ自分はさみしいのである。
「結局俺のわがままだ」
でもほしいものはほしい。だから横尾は美藤に一方的に、自分は家を出るから探せという賭けにでたのだ。もちろん勝つつもりだ。
捕まってしまった美藤は不運だなと嘆きつつ横尾は夕飯を食べた。
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