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角煮も美味しくて、ぐだくだと話しながら過ごすと夜も遅くなってきた。新見はいつも早いのかあくびをする。
「もう帰るか?」
「えっ、まだいる!」
「別に泊まっていってもいいよ。明日休みだし」
食べ物は片付け終わってみんなでトランプをしていた。
こうして夜遅くまで話すことはなかったしトランプも相まって修学旅行をおもわせる。
「俺らも、結構仲良くなってきたしさ、暴露大会とかしねぇ?」
「お前、ほんとゴシップ好きな。それで、よく週刊天白、悪く言えたわ」
「友達のことは知りたいと思うじゃん。でも、嫌がることはしたらだめというか」
依田がしどろもどろにいいわけをするのを東が遮った。
「んー、そういうのさ、言った人からするんじゃない?」
東は珍しく人の悪い顔をしている。
「えっ、俺」
依田はカウンターをくらって口ごもる。
「そうそう。依田がエグいの話したら、俺もエッグいの話そうか?」
ふふふと、東が笑った。それがどういう類いの話かは分からないけど、どことなく東は官能的に笑う。
「東、なんかエロいね。俺、東抱けるわ」
「はっ? えっ、は?」
眠さもあって横尾は調子に乗って言った言葉に依田が思ったよりもあせった。それがおもしろくなった横尾は口角をあげるような笑みをして、隣の東にしなだれかかった。
東は困っているけど、ごそごそとする横尾を止めようとする気配はない。新美は、仲良いねと、笑うだけだ。
「ヨコ、ちょ、何する気だよ! お前、誰でもいいと言うか、そんながちホモなのか!?」
依田のテンパりに対して、横尾はにやけながら言う。
「見た目がよければよいほどいいね」
横尾は東のメガネの縁にそっと触れた。
「お前、彼氏いるって言ってたのに、ねぇ、まって! ほんとに、ヨコ、マジで!」
依田が、本気で慌てるというか、なぜかそれが悲壮感があったので、横尾は起き上がってた。
「いや、まじでどうこうしようってわけじゃないって、冗談だよ。冗談。でも、かわいいものを、めでたいじゃん。ちゅーしたいって、思うじゃん」
「ヨコ、キス魔なの?」
新見はほとんど眠ったまま言った。
「新見にはいつでもちゅーしたいと思ってるけど。今まなら、許されるんじゃ……!! おでこにしてもいい?」
横尾は反対に座る、新見に向かって投げキッスした。新見は横尾のその姿を見て楽しそうに笑った。
「ヨコみだれてる!! 不純だ!!」
横尾と新見の間に、依田は思いっきりチョップをいれた。
「チューで不純とか、笑う。これだから、童貞は」
「そんなに不純に乱れるんだったら、俺、まだ童貞でもいい!」
「別に俺も、乱れてはねーよ。あぁ、でも、ゆきちゃんとは、付き合ってないけど、やってたな」
「超絶に乱れてるじゃん」
絶句する依田をよそに東は冷静につっこむ。
「ちげーわ、あっちが強姦してきたんだよ」
「えっ、は?」
一瞬にして三人は無言になった。空気まで止まったみたいだ。
「うわ、なんか、ぽろっと、しゃべっちゃった。まぁ、いいや、次、依田なんか、暴露な」
横尾は自分の会話を強引に切った。
「はっ、えっ 合意じゃなく、」
「別に俺も拒否しなかったから。だから、もういいよ、俺のことは」
テンパる依田はまだなにか言おうとしたが横尾はそれ以上は話さない。
「それでも横尾は好きなんだ」
東が横尾にすっと話しかけた。
「まぁ、そうね。ずっと好きだったんだよ。だから、まぁ、俺も許した。はい本当に終わりこの話は」
横尾は自分の顔が赤くなるのを感じた。依田は納得がいかないようだったけど、横尾に遺恨がないのは分かったのでそれ以上つっこまなかった。
その後も四人はしばらく話してなかなか解散できずに過ごした。
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