37 / 53

3

球技大会はバスケ、サッカーともに三年生のクラスが勝ったらしい。サッカーは新見が応援してた同室の人がいるクラスが勝った。壇上で今日の総括を体育委員長と会長がしている。会長を見るのは2度目だけど、やっぱり甘いマスクのイケメンだった。いわゆるノンケが多いうちのクラスの男も見惚れている。  それでもやっぱりうちのゆきちゃんのほうがかっこいいと横尾は思った。 球技大会を終えて横尾は自分の部屋に戻った。難波は打ち上げに行くと言って出て行った。対して運動はしてないけど、横尾は疲れてベッドに仰向けになる。なんだか胸騒ぎがした。でも、その原因はわからない。思い過ごしだと、目をつぶるとすぐに、疲れていたのか眠ってしまった。  起きたら日をまたぐ一歩手前の時間だった。結構な時間寝てしまったので、二度寝はきびしいかもしれない。明日が休みでよかった。  上体をおこすと、難波が床にねころんでチャットをしていた。もう風呂には入ってきたのか、スエットだ。  難波は横尾に気づいて振り向いた。 「おはようさん。よう寝てたね。なんか夢見てた?」 「なんで?」 「めっちゃにこにこしてたからなんでかなと思って。めしは?」 言われて、顔を触るけど、触ったところでわからない。 「食ってないけど……。あっ、ごめん。ベッド借りてた」 「別にかまわんよ。ていうか、下の方が使いやすいのわかるし。まぁ、夜は自分のベッドで寝てほしいけど」  横尾はベッドから出て、伸びをした。部屋の二段ベッドは解体して並べることはできるが横尾も難波も部屋が狭くなるのが嫌で二段のままだ。横尾は上のベッドを使ってるが、登るのが面倒で難波がいないときはよく拝借していた。ただ、難波は高所恐怖症なので横尾が下のベッドで寝ると、寝るところがなくなってしまう。 「起こしてくれてもよかったのに」 「チャット終わったら起こすつもりやったよ。友達からうどんもろたけど食べる?」 「あー、食べる?」 「実家からめっちゃ送ってきてんて」 「香川?」 「そうそう」  難波が珍しくつくってくれたので横尾はそのうどんすすった。彼はもう食べてきたようだ。  横尾は夢を見ていた。小さい頃の横尾と美藤が出てきていた。美藤の名前は由樹と書いて、よしきと読むのだけど横尾はいつもゆきちゃんと呼んで嫌そうな顔をされていた。  あの頃から、ゆきちゃんのことは好きだった。でもそれは友達として大切だと言う意味だった。 世話をしていくうちに好きだという気持ちが高まった。あぶなげな美藤のことが横尾はいつだって気にかかっていた。でも本当にずっと一緒にいたから、これはなんらかの刷り込みかもしれない。その疑いが自分のなかに灯ったのはいつだったろうか。  高校をきに別れたのは、美藤の気持ちと自分の気持ちも確認するためでもあった。  美藤が、見つけてくれなくて寂しい。今日合うことが出来なくて、寂しい。小さい頃の夢からさめて、彼がそばにいないのが寂しい。美藤がそばにいないとこんなにもさみしい。 「やっぱ、いい夢やったんやろ?」 うどんを食べ終わると難波が下げて洗ってくれた。 「そうでもないけど」  横尾はそう言って、少し笑った。 「いや、そうかも」  自分の気持ちは確認できた。 また、見れたらええな、と難波が笑って背中を叩いた。

ともだちにシェアしよう!