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エピローグ

 次の日の朝、横尾は定時におきた。横で美藤は寝ている。大学のゼミは午後から動き出して、夜遅くまで続くので、この時間はいつも寝ているそうだ。  脱ぎ散らかした制服を手で伸ばして着直す。部屋を出る準備を整えてから、ベッドのわきに手を伸ばした。  そこには離れる前に返した指輪が転がっている。美藤はずっとこれを首から下げていたそうだ。  チェーンからその指輪を外して再び奪った。代わりに嫌な予感がして持ち歩いていたお返しの品を、美藤の指にはめた。美藤の指に光る指輪は奪った指輪とは色違いのブラックだ。  横尾はその指にキスをして、起こさないように、そっと、部屋を出た。 「横尾、朝帰りやん」 自分の部屋では難波がもう起きていて、歯を磨いている。今日は家にいたようだ。 「そうそう。嬉はずかし朝帰りってね」 「ふっる!」 難波が口をゆすぐのを待ってから、続いて歯をみがく。 「すげー、噂になってんよ。一年の男が二年の不機嫌な狼とふけたって」 「不機嫌な狼って」 ぴったりだなと、横尾は思った。 「どういう関係って気かれたんやけど、そんなん知らんってゆうても、しつこいやなんやで、って、早く出んと」  難波はまた教えろよって、でていった。  横尾もすばやく身支度をして、部屋を出る。  寮から教室まではずっと、噂の的だった。 教室につくと一斉にみんなが横尾を見て静かになった。 「ヨコ、さっそくだけど、美藤さんとの関係は!」  いつも遅刻の依田が横尾より先に教室にいて、さっそく、えんぴつをマイクに、手帳をもつ。 横尾は薬指にはめた指輪を堂々とみせつけるようにだした。 「あの男は俺のものだから、みんな手をださないように」  教室は動揺したが、あまりにも横尾の男らしいイケメンぶりに、お祝いムードになる。 おめでとうと、東と新見が言ったことがダメ押しで拍手が沸いた。 「美藤さんなら、横尾が自慢したいのもわかるよ」 依田が、呆れたようにいった。 「だろ、自慢の嫁だから」 向こうが、嫁かよ!と、依田が盛大にさけんだ。 終わり

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