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第5話(※)前回投稿したお話をこちらに差し替えました
「お前…彼氏は?」
俺の首筋を撫でながら柊吾 さんが聞く。
逃げたいのに柊吾さんが馬乗りになってるから動けない。
プライベートの事まで話したくなくて、顔をそむけると、首筋にピリッとした痛みを感じた。
だめ、そんなに強く吸ったらキスマークがついちゃう…!
俺はイヤイヤと首を横に振ったり、両手で柊吾さんの体を押したりして訴える。
「言えよ」
柊吾さんは不満そうな顔で今度は首筋を舌でなぞり始めた。
俺は前向きにあきらめた。
言わないとこのまま何をされるかわからない。
「んんっ…今は…いません…。つい最近…あぁん、出て行っちゃったから…」
「ふーん…、どんな奴」
「…言いたくないです」
無駄だと思ったけど、ささやかな抵抗を試みる。
『言えよ』と言わんばかりの顔で俺を見るから、仕方なく口を開いた。
「将来を約束して…一緒に住んでた大切な人」
俺にはつい最近まで同棲していた彼氏がいた。
背が高くて優しい彼だった。
『一生一緒にいようね』って約束もしていた。
穏やかな毎日が幸せだった。
でも、そんな日常はあっけなく終わりを告げた。
『子供ができた。父親になるから別れて欲しい』
俺の大好きな声で彼はそう言った。
一緒に住んでいても全然そんな気配がなかったから驚いた。
相手の事は詳しく言わなかったけど、彼の真剣な表情から相手は結婚を視野に入れて正式にお付き合いしている人なんだと感じた。
彼の瞳にはもう俺は映っていなかった。
俺には身を引く以外の選択肢はなかった…。
柊吾さんは黙って俺の話を聞いていた。
言葉にしていくうちに、幸せだったあの頃や、彼の笑顔、家を出て行く彼の後ろ姿を思い出して悲しくなってしまった。
失恋しただけでなく、エアコンと冷蔵庫まで壊れるWの悲劇。
まだショックで立ち直れない。
でも、電化製品のために働かなくちゃいけなくて…。
そんな中で見つけた仕事は好きでもない人のセックスの相手。
しかも3人。
どれだけ不幸なんだろう…。
自分の境遇を認識したらもう我慢できなかった。
涙腺が崩壊した俺はポロポロと涙をこぼした。
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