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第6話
「……泣くなよ。悪かった」
柊吾 さんが涙を拭ってくれた。
今までと全然違う優しい眼差し、温かな指先。
急に心臓が騒ぎ出した。
「す、すみません…」
慌てて涙を拭いていたら、柊吾さんが俺を解放してくれた。
急いで起き上がって、乱れた洋服を直す。
「泣いてる奴、襲う趣味はないからまた今度だな」
そう言って俺の髪をグシャグシャと撫でた。
何…それ…。
さっきまであんなに意地悪だったのに急に優しい。
精神的に弱っている俺は、その優しさと今までのギャップにキュンとしてしまった。
近くでよく見たら、少女漫画の実写が似合いそうなほどカッコいい人だった。
キリッとしていて炭酸のCMが似合いそうな爽やかスポーツマンタイプ。
そんな人に押し倒されたかと思うと急に恥ずかしくなった。
どうしよう、早鐘を打つ心臓の音が聞こえてしまいそう///
「俺は可愛く甘えてくる奴を抱くのが好きなんだ。今度までに甘え方勉強して、俺を満足させろよ。男に逃げられた不幸のどん底貧乏サラリーマン」
「なっ…!」
前言撤回!
全然優しくもカッコよくもない。
俺の事、住み込みで身売りにきた性欲処理係だと思ってるんだ…!
「あ、晩メシ唐揚げな。19時で」
それだけ言うと、俺の部屋から出て行ってしまった。
くそっ、見てろよ…!
絶対美味しいって言わせてやる…!
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