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第16話

「いただきます」 朝ご飯は皆で一緒に食べるのがこの家の決まり事。 今朝は昨日街に出かけた秀臣(ひでおみ)さんが買ってきてくれたマフィン。 今日は寝坊してしまったし、皆が朝揃うなら、明日からは腕によりをかけたメニューを作ろうと思っていたら、ドーナツやマドレーヌ、菓子パンみたいな買ってきた甘い物が定番らしい。 朝ご飯のために誰も早起きしなくていいように。 皆が大好きな甘い物を食べながら、家族の会話を楽しめるように。 俺もその仲間に入れてもらえる事になった。 甘い物を並べるのは長男の秀臣さんの係。 次男の麻斗(あさと)さんはコーヒーを淹れる。 三男の柊吾(しゅうご)はカフェ・オ・レ派の麻斗さんと俺のカップに牛乳を注ぐ。 俺は今日から、明日の朝食の買い物係を任命された。 何味があるのかな…と、ワクワクしていたら、全部プレーン味だった。 3人とも一途なプレーン派。 聞いてみたら、バウムクーヘンやドーナツ、揚げパン…何でもプレーン一択。 アイスクリームもバニラ派らしい。 俺は季節限定や数量限定派。 『今日こそは定番を買おう』って思ってお店に行くけど、ついつい限定品に手が伸びるタイプ。 これからはプレーンを3つと俺の好きな味を1つ買おうと思った。 一家団欒の時間が終わると、秀臣さんはアトリエ兼自室へ。 仕事で朝帰ってきた麻斗さんはお風呂に入って眠りにつく。 柊吾は気ままに過ごす。 片付けは俺の仕事。 「環生(たまき)、お風呂入ろう」 使ったカップやお皿を洗っていたら、麻斗さんが声をかけてきた。 どうやらさっきのお誘いは本気だったみたい。 「嫌だったら断っていいよ」 そう言いながらも、俺を後ろからぎゅっと抱きしめて離さない。 返事に困っていたら、俺の髪にキスをしたり、『入ろうよ』って囁いてみたり。 きっと俺が入るって言うまでこのまま粘るんだと思う。 俺より大人で体も大きいのに子供っぽくて不思議な感じ。 甘えたがりなところもちょっと可愛く思えてきた。 背中を流すくらいならいいかな…。 そう思いながら洗い終わったカップを拭いた。

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