18 / 420
第18話
「麻斗 さん、気持ちいい?」
俺は泡だらけの両手で、お風呂マットに座る麻斗さんの背中を洗う。
丁寧に撫で洗いをしたり、肩や肩甲骨のあたりをマッサージをしたり。
「気持ちいいよ。環生 は上手だね」
麻斗さんは何をしてもすぐに俺を誉めてくれるし、喜んでくれるから嬉しい。
もっと麻斗さんに喜んで欲しくなる。
いい事を思いついた俺は自分の体に泡をたくさん塗りつける。
でも、そんな事してもいいのかな…。
一瞬迷ったけど、思い切って麻斗さんの広い背中に抱きついた。
こうしたらたくさん触れ合える。
ちょっと風俗のお店みたいな感じで恥ずかしいけど、泡だらけの体を擦りつけていく。
「ど、どう…?麻斗さん///」
「うん、いいね。そんな可愛い事されるの初めてだよ」
リラックスした麻斗さんの声。
きっと麻斗さんはもっと触れて欲しいんだ。
いつも俺を抱きしめて可愛がってくれるように、麻斗さんもそうして欲しいのかも。
麻斗さんは愛に飢えてるんだ…。
昨日、柊吾が俺の淋しさを癒して、心を満たしてくれた。
今日は俺の番。
麻斗さんを癒してあげたい。
「環生、こっち」
手を引かれてあっという間に胡座をかく麻斗さんの膝の上に乗せられた。
お姫様抱っこみたいで恥ずかしい。
「抱きしめてもいい?」
誘うような甘えるような麻斗さんの声に、ドキンと心臓が跳ねた。
「うん…いいよ」
俺がうなずくと、麻斗さんはぎゅっと俺を抱きしめた。
俺も麻斗さんの背中に手を添えて体を寄せる。
恋人でもない人と裸で抱き合うなんて初めての経験。
恥ずかしいけど…ちょっと新鮮。
麻斗さんを癒してあげようって思ってたのに、優しく抱きしめられると甘えたくなってしまう。
昨日さんざん柊吾に甘やかしてもらったのに。
「麻斗さん…」
麻斗さんの頬に頬ずりすると、麻斗さんは嬉しそうに微笑んだ。
「可愛いよ、環生は本当に」
麻斗さんの唇がおでこに触れた。
『可愛い』とおでこチューに照れて頰が染まっていくのがわかる。
「環生も洗ってあげようか」
俺が返事をする前に、優しくて大きな手がゆっくりと背中を撫でていく。
大切な物に触れるような優しい手つき。
マッサージをされてるような、愛撫をされてるような…そんな感じ。
くすぐったくて…気持ちいい…。
「こっちもキレイにしないとね」
されるがままになっていると、麻斗さんの手が胸や太ももにも伸びてくる。
「あっ…///」
思わずエッチな声が出てしまった。
ただ、体を洗ってもらってるだけなのに…。
は、恥ずかしすぎる///
麻斗さんは、ふふっと笑うと今度は腰のあたりに触れる。
「んっ…」
どうしよう…勃ってきちゃった///
全然性的な触れ方じゃないのに。
こんな時に感じてしまうなんて、ますます恥ずかしい。
でも、意識すればするほど、体の中心が熱を持つ。
無理だよ、この状況でムラムラしない方が無理…!
開き直りたい気分だけど、そんな勇気がある訳ない。
手でそこを隠しながらモジモジする事しかできなかった。
「どうしたの?勃っちゃった?」
耳元で響く甘い声。
明らかに俺の反応を楽しんでる感じ。
「酷い。気づいてて聞くなんて麻斗さんの意地悪」
俺が頰を膨らませて抗議すると、また楽しそうに笑う。
「ごめんね。恥ずかしがる環生が可愛くて」
ごめんねのキスは頰からだんだん耳元へ。
「続きしてあげようか。それとも自分でする?」
映画のワンシーンみたいなエッチなセリフ。
裸で抱き合ってる時にこんな官能的な声で囁かれて、俺はパニックになった。
「ど、どっちもしない!恥ずかしい///」
俺は麻斗さんの手をすり抜けて急いで湯船のお湯をかぶる。
クスクス笑う麻斗さんを放置してお風呂から逃げ出した…。
ともだちにシェアしよう!