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第25話

はぁ…気持ちよかった…。 久しぶりにイッた気がする。 別れた彼とのセックスを思い出してしまいそうで、ずっとオナニーするのを避けてたから。 まさかの自慰の見せ合いになってしまったけど、頭が空っぽになってスッキリした。 程よい倦怠感が心地いい。 「環生(たまき)、すまない。すぐに拭く物を持ってくる」 簡単に自分の後始末をした秀臣(ひでおみ)さんはそう告げるとベッドを降りていってしまった。 俺が望んだ事だから謝らないで欲しい。 拭いたらもったいないから、このままでいい。 それに、拭く物なんて何だっていい。 それよりも今は側にいて欲しかったな…。 秀臣さんが出ていってしまった扉を淋しい気持ちで眺めながら、ふと気づいた。 秀臣さんがフリーな理由。 きっとこうやって全てを自己完結させてしまうからかも。 モデル中はたくさん触れてくれたけど、エッチな事をしてる時は俺に触れも触れさせもしない。 俺は恋人ではないから余計にそうなのかも知れないけど、秀臣さんの考え方や接し方はどこか一方通行。 秀臣さんの世界に飛び込ませてくれる感じもしないから、少し疎外感を感じてしまう。 自分がいなくても秀臣さんは生きていけるって淋しい気持ちになってしまう。 それに、彼のセンスも独特で、凡人の俺にはよくわからない。 時代が彼に追いついていない感じ。 そんな要素が合わさってる珍しいタイプだから、恋人を作るには大変そう。 ぼんやりそう思っていると秀臣さんが帰ってきた。 「待たせてすまない」 お湯の入った洗面器とタオルを持ってきてくれた秀臣さん。 いい香りのするお湯に浸したタオルで丁寧に俺の手や体を拭いてくれた。 きっとリラックス効果とかがあるアロマオイルが入ってる特別なお湯なんだろうな…。 お湯の温度もちょうどいいし、タオルもふわふわ。 俺の体を拭くためだけに、こんなに準備してくれたんだ…と思うと、あったかい気持ちになった。 言葉も少なめで、こだわりがあって、振る舞いにも少し壁を感じてしまう事もあるけど、きっと不器用なだけなんだと思う。 だって、秀臣さんはこんなにも優しい。 後始末なんて自分でできるのに。 秀臣さんは手間暇をかけて全部やろうとしてくれる。 例えそれが『自己完結』でも、それに甘えてしまえばこんなにも幸せ。 そんな優しい温もりに身を任せていると、だんだん眠くなってきた。 「このままゆっくりするといい」 「でも…モデルの最中だし…。まだ家事も残ってます。お昼ご飯の準備もしないといけないし…」 「モデルはもう終わりだ。環生のおかげで創作意欲が高まった」 よかった…役に立てたんだ…。 何だかよくわからない事になってしまったけど、頑張ってよかった…。 「昼も夜もデリバリーを頼むから気にしなくていい。この家へ来てまだ慣れないから疲れただろう。そんな時に無理をさせてすまなかった」 秀臣さんの手で丁寧にメイクも落とされていく。 顔をマッサージされてるみたいで気持ちいい。 家政夫の仕事を始めて、充実してるし楽しくて毎日刺激的だけど生活環境も、一緒に過ごす人も、役割も何もかもが変わってしまった。 知らないうちに緊張していて、ずっと肩に力が入っていたのかも…。 秀臣さんに労ってもらって色々なプレッシャーから解放された俺は、そのまま意識を手離した…。

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