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第26話
それから一週間が過ぎた。
少しずつ家事にも慣れてきて、要領もよくなってきた。
毎日忙しくて、別れた彼との思い出に浸る暇もないくらい。
皆との接し方も何となくわかってきた。
秀臣 さんは、思った事を遠慮せずに言葉にした方が上手くいく。
嫌だと感じた事は嫌、して欲しい事は『○○して欲しい』ってハッキリ伝えると、秀臣さんは嬉しそうに対応してくれた。
麻斗 さんとはスキンシップを増やした。
おはよう、行ってきます、ありがとう…事あるごとに抱きしめ合って頰にキスをし合うようにした。
柊吾 がまた何か言ってくるかも知れないけど、こうしている方が麻斗さんと仲良しでいられるから、気にしない事にした。
初日にこの仕事の内容を知らされた時は、毎日皆のセックスの相手をする性奴隷みたいな生活なのかと怯えていたけど、全然そんな感じじゃなかった。
初日に柊吾がイタズラをしてきたくらいで、それ以外は直接的に体を求められる事もなかった。
皆優しいし、俺の事を大事にしてくれる。
一つ屋根の下、タイプの違うカッコイイ3人に代わる代わるチヤホヤされて少女漫画のヒロインのようなオイシイ&モテモテ生活を送っていた。
夜は毎日柊吾のベッドで一緒に眠る。
毎晩柊吾が俺のお風呂上がりを待ってるから。
与えられた和室は着替えを取りに行くくらいの物置状態になっていた。
最初は柊吾のイイ顔が近くにありすぎてドキドキしたけど、毎日見てたらだんだん目が慣れてきた。
最近は学生時代のサークル仲間と雑魚寝するみたいなそんなノリ。
『明日の晩ご飯は何が食べたい?』とか、『明日は雨が降るらしいよ』とか、そんな事を話しながら眠る。
昼間も俺が買い物や用事で外出する以外はずっと一緒。
柊吾は何者なんだろう?
学生でも、仕事をしてる感じでもなさそうだし、一度も出かけたり、誰かと連絡を取ったりしてる感じもないから不思議だった。
引きこもりのニートなのかな…。
それか…不動産や株とかで収入を得てる系?
実は体が弱いとか…?
何となく聞いてはいけない事のような気がして、聞けずに過ごしてきた。
秀臣さんも麻斗さんも、事あるごとに『柊吾を頼む』って言う。
不思議に思った俺は思い切って麻斗さんに理由を聞いてみた。
切ない表情を浮かべた麻斗さんは、衝撃の事実を教えてくれたんだ…。
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