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第29話
翌朝の事。
朝ご飯の時間に合わせて秀臣 さんと一緒に部屋から出ると、お風呂上がりの麻斗 さんと、俺がいない事に慌てて部屋を出てきた柊吾 と鉢合わせた。
朝ご飯を食べながら緊急家族会議。
4人で昨日の出来事を話し合った。
麻斗さんは全面的に俺の味方をしてくれたし、柊吾は平謝りをして朝ご飯のドーナツを丸ごとくれた。
俺も悪かったからちゃんと謝って、俺の分のドーナツをあげた。
柊吾は俺を怖がらせないよう、しばらく別室で眠る事や昼間も用事以外で俺に近づかないようにする事を約束してくれた。
朝ご飯の後『1人にしてくれ』と、部屋にこもってしまった柊吾が心配でさり気なく部屋の外まで行ってみた。
ドアに耳を寄せて様子を伺っていると、急にガチャンとか、ドサドサッとか大きな物音がして驚いた。
柊吾が暴れてるのかも知れない…!
心配でドアを開けようと思ったら、その手を止める人がいた。
「麻斗さん…」
「今は開けない方がいい」
「でも…」
麻斗さんは小さく首を横に振った。
「今日は秀臣が仕事で出かけるから、環生 は俺の部屋においで」
麻斗さんは俺を部屋に連れて行ってくれた。
麻斗さんの部屋はナチュラルなベージュ系と茶色でコーディネートされた癒し系の空間だった。
部屋に鍵をかけた麻斗さん。
俺をソファーに座らせてくれた。
「ここにいれば安心だから。俺は今から休むけど、環生は好きに過ごしていいからね」
そう言いながら、雑誌や本を何冊か見繕ってくれた麻斗さん。
そのままソファーに横になって俺の膝に頭を乗せた。
「膝枕…///」
「膝枕するの嫌?」
俺は首を横に振った。
膝枕は麻斗さんの優しさだと思った。
温もりを与えて安心させてくれるのと、柊吾を気にする俺が強制的に様子を見にいけない状況を作ってくれたのと。
「柊吾…大丈夫かな」
「柊吾は環生を怖がらせてしまったのを後悔してたよ。だから今は落ち込み中なんだ。そっとしておけばいいよ。ごめんね、柊吾が」
俺はまた首を横に振った。
「俺が悪いの。だから柊吾は全然悪くない…。俺にした事も、寝ぼけてした事だし、ちゃんと謝ってくれたし…」
麻斗さんは手を伸ばして俺の頰に触れた。
「酷い事されたのに、柊吾を庇うの?」
「そ、そういう訳じゃ…///」
「環生は優しいね。俺たちもそうやって柊吾に接したらよかったのかな…」
麻斗さんはちょっと切ない顔をした。
麻斗さんも柊吾への接し方を探っている様子だった。
「優しいのは麻斗さんだよ。ここへ来てどれほど麻斗さんの優しさに助けられたか…」
頰を撫でる麻斗さんの手に、自分の手を重ねて頬擦りをした。
「ありがとう、俺たちも環生の存在に救われてるよ」
微笑んだ麻斗さんは、俺の頰を撫でながら眠りについてしまった。
仕事で疲れているし、夜も仕事だから、起こしたらかわいそう。
ゆっくり休ませてあげたい。
できる事がなくなった俺は麻斗さんと一緒に昼寝をしてしまったんだ…。
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