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第3章 第14話

ふと目を覚ますと柊吾(しゅうご)の腕の中だった。 あのままずっと抱きしめててくれたんだ…。 今、何時だろう…。 お昼ご飯を作らないと…と思いながら柊吾を見ると、気持ちよさそうに眠っていた。 背中に添えられた大きな手。 眠っているから無意識なはずなのに、守られているような安心感を覚えた。 柊吾の腕枕は気持ちいい。 悟に腕枕をされた時みたいな胸のときめきはなかったけど、その分たくさんの安らぎをくれる。 悟に変な寝顔を見せるのは恥ずかしいけど、柊吾には平気。 俺が口を開けて寝ていても、イビキをかいても、ヨダレを垂らしてもきっと笑ってくれるから。 柊吾の恋人は幸せだろうな…。 優しいし、細かいところも気づいてくれるし、口では文句を言いながらも結局何でも受け入れてくれる。 それに背も高くてカッコイイ。 無職で引きこもりなのが玉にキズだけど、こんなに素敵な人なかなかお目にかかれない。 柊吾が外に出るようになったらモテるだろうな…。 いつか柊吾に好きな人ができたら、今ほど俺の相手をしてくれなくなるから、きっと淋しい。 でも、それはそれで嬉しい事。 だって亡くした恋人の事を乗り越えた証だから。 でも…もう少し。 もう少しだけ俺専属の腕枕でいて欲しい。 勝手なのはわかってるけど…できれば、俺に恋人ができるまで。 「柊吾、いつもありがとう」 今日の晩ご飯は柊吾の好きな唐揚げを作ろう。 俺はそっと柊吾の顎にキスをした…。

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