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第3章 第15話
そんなこんなで一週間がたった。
ふとした時にまだ悟 を想う事はあるけど、未練や後悔ではなかった。
どちらかと言うといい思い出。
叶わなかった恋を美化してるだけかなぁと思う事もあるけど、それで幸せな気持ちになれるんだから、それはそれでいいと思っていた。
お昼ご飯を済ませた俺は街へ出た。
今日は悟を思い出す記念アイテムと、自分の夏服を買うつもり。
今まで平日はスーツと部屋着、土日は私服生活だったけど、会社勤めをやめたからこれからは毎日私服。
手持ちの洋服が全然足りなかった。
デザイナーの秀臣 さんが作るって言ってくれたけど、奇抜なデザインすぎて機能性はなさそうだから、丁重に断った。
淋しそうな顔をするから、咄嗟に『秀臣さんとセックスする時に着るエッチなコスチュームを作って』とおねだりしたら、あっという間に黒の総レースのTバックと純白シースルーのフリフリエプロンが完成してしまった。
秀臣さん、そういうのが好きなんだ…。
初めてここへ来た日に貸してもらえたあのエプロン…あれも秀臣さんが選んだに違いない。
夏が近づいて暑くなってきたし、家事もするから、普段着は身動きしやすくて洗いやすくて、ちょっとオシャレな洋服がいい。
自分の物はささっと買って、記念アイテムを吟味した。
あちこち見て回ったけど、結局最初に入った百貨店で悟っぽいオシャレなネクタイピンを買った。
トワレもいいな…と思ったけど、ずっと形に残る物がよかった。
自分のネクタイピンや腕時計を入れてある箱に、もらったハンカチと一緒に大切にしまっておこう。
もし、悟が懐かしくなったら取り出して眺めよう。
もし、悟を側に感じたくなったら、身につけてお守りにしよう。
そんな事を考えながら…。
平日の昼間は電車もお店も空いていて、土日は長蛇の列になるバウムクーヘンのお店も少し並ぶだけでよかった。
気になってたカフェも1人で入ってる人が多かったから、思い切って入ってみた。
平日の昼間って楽しい!
3人へのお土産や、明日の朝ご飯用のあんぱん、デパ地下の美味しそうなお惣菜やSNS映えしそうなサラダ…あれこれ買って大満足で帰った。
麻斗 さんは仕事だから3人で晩ご飯を食べた。
秀臣さんも柊吾 も俺のお土産話を楽しそうに聞いてくれた。
「環生 、今日は俺の部屋に来ないか」
食器を片付けていると、お風呂上がりの秀臣さんが声をかけてくれた。
「うん、行く。ねぇ、秀臣さん。俺…脚のマッサージして欲しい…」
俺がおねだりすると、秀臣さんは少し頰を染めてうなずいた。
最初は敬語で話してたけど、セックスをしたあたりから、心の距離が近づいた気がして少しずつ砕けた感じで話すようになった。
秀臣さんも特に何も言わなかったから、それがそのまま定着してしまった。
俺は日替わりで誰かの部屋で眠る。
ここへ来て、さらに甘えん坊になった俺は1人では眠れなくなった。
麻斗さんはなかなか家にいないから、麻斗さんがお休みの日は優先的に麻斗さんの部屋で眠る。
残りの日は秀臣さんと柊吾の部屋のどちらかで。
昨日は柊吾の部屋で眠ったから、今日は秀臣さんの部屋へお邪魔する気でいた。
歩き過ぎて脚が棒になってしまったから、秀臣さんにアロマオイルでマッサージをしてもらいたかった。
「準備をしておくから、後で来るといい」
「嬉しい。ありがとう秀臣さん」
今夜は秀臣さんの部屋でリラックスタイムを過ごす。
俺は鼻歌を歌いながら急いで洗い物を片付けた。
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