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第3章 第16話
「お待たせ、秀臣 さん」
お風呂上がりの火照った体で秀臣さんの部屋へ行くと、もうマッサージの準備が整っていた。
控えめの照明と微かなヒーリングミュージック。
俺は部屋着を脱いで秀臣さんが用意してくれたお手製のパジャマを着せてもらう。
今日はお姫様のドレスみたいな淡い水色のロング丈ネグリジェだった。
体のラインがちょっと透けるけど、肌触りのいい柔らかな布で、着ていて気持ちいい。
秀臣さんの部屋で眠る日の彼はいつもこうやって俺を着せ替え人形にして遊ぶ。
エッチな下着みたいなパジャマの時もあるし、着心地重視のゆったりした綿のワンピースみたいな時もある。
「どう…かな。秀臣さん」
「綺麗だ。まるで妖精だ」
「あ…ありがとう///」
いくら何でも妖精は言い過ぎだと思うけど、誉められると嬉しいし、動くと揺れる裾の感じが楽しくてゆっくりターンしてみる。
普段はシンプルな部屋着だから、何だか新鮮。
秀臣さんと暮らさなかったら、たぶん着る事がなかったデザインのパジャマがいっぱい。
秀臣さんに促されてソファーに横になった。
ふかふかのクッションが気持ちいい。
秀臣さんはソファーの座面と同じくらいの高さのイスを持ってきて俺の足元に腰かけた。
「始めるぞ」
「うん…お願いします…」
秀臣さんはゆっくり俺の足首に触れた。
そんなところに触れられるのに慣れてなくて体がビクッと反応してしまった。
俺の足の裏に手を添えて持ち上げた秀臣さんは足の甲にそっとキスをした。
「や…待って、秀臣さん///」
足へのキスは秀臣さんのモデルをしてる時にされた事はある。
その時はノリノリ気分で何でもアリだったけど、2人きりでの実生活でされたのは初めてだから驚いた。
「綺麗だ」
触れた唇がゆっくり移動してつま先の方へ。
5本の指先にも順番にキスされる。
「だめ、汚いから…///」
秀臣さんから逃れようと思うけど、しっかりホールドされてしまってる。
マッサージしてもらうから、いつもよりは丁寧に洗ったけど口づけされる前提で洗ってないし、仮に念入りに洗ってても足なんてキレイじゃない気がする。
「や…秀臣さん。恥ずかしい///」
「恥じる事はない。俺はただ美しい環生 を愛でているだけだ」
秀臣さんはきっとおかしなフィルターを通して俺を見てるか、美的感覚がちょっとズレてるんだと思う。
平凡な成人男子が着たネグリジェ姿や26.5cmの足が綺麗で美しい訳がない。
そんな事思ってる間もキスは止まらない。
いつもよりうっとりした表情の秀臣さん。
秀臣さんが興奮して、セックスする流れになっちゃったらどうしよう///
悟との事もあったし、今日はまだちょっとそんな気分になれないと言うか…。
俺は純粋にマッサージをしてもらいながら秀臣さんとのんびり過ごしたいだけなのに…。
緊張で体を強張らせていると、秀臣さんは少しだけ微笑んだ。
「環生の望まない事はしない。だから怖がらなくていい」
そう言った秀臣さんは立ち上がって俺の側までくると、安心させるように優しく抱きしめて髪を撫でてくれた。
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