82 / 420
第4章 第4話
「あの…誠史 さん。俺、留守番してますから秀臣 さんたちと行って来てください」
家族を置いてきぼりにして、他人の俺が温泉旅行に連れて行ってもらうなんて申し訳なさすぎる。
聞いてくれるかわからないけど、下降中のエレベーターでそう伝えた。
「遠慮しなくていい。息子たちは俺との温泉旅行は望んでないよ。何より俺は環生 と行きたいんだ」
誠史さんはチュッと俺のおでこにキスをした。
うわぁ、キスされた…///
出会ってまだ15分くらいしかたってない誠史さんに腰を抱かれてキスまでされた。
でも、手は軽く添えられてるだけだし、キスも爽やかな感じで全然嫌じゃなかった。
麻斗 さんのキスに似てるかも。
口調はカジュアルなのに、今までの恋人とは違う落ち着いた大人の魅力があちこちから滲み出てる。
どんな事でも受け止めてくれそうな包容力や、地に足がついてる感じの安定感とかそんな感じの。
でも、トワレがセクシーだし、ちょっと遊び慣れた感じの危うさもあって…。
それにこの整ったビジュアルが合わさったらもう無敵。
きっとモテるんだろうな…。
「環生は俺とデートするのは嫌かい?」
「嫌だなんてそんな…!まだ自分の身に起きてる事についていけてなくて…」
「そう…嫌じゃないなら、それでいい」
ちょっと微笑んだ誠史さんは、慣れた手つきで俺を車の助手席にエスコートしてくれた。
普段は秀臣さんが乗っているから、秀臣さんの車だと思ってたけど、家族皆の車らしい。
「さぁ、行こうか」
「はい…よろしくお願いします」
ここまで来たら後には引けない。
よくわからないけど、秀臣さん達のお父さんだから、きっと酷い事はしないはず。
もういいや、流れに身を任せよう。
俺が返事をすると誠史さんは優しく微笑んだ。
ともだちにシェアしよう!