86 / 420

第4章 第8話

環生(たまき)に会えて安心したよ。息子たちは本当に環生が大好きのようだ。今までは俺の身勝手な振る舞いを見ても、見て見ぬふりをするような息子たちだった。でも今日は違った。環生を旅行に誘った時、それを阻止して環生を守ろうとした」 「俺…泣き虫だから、きっと皆が放っておけないだけだと思います。でも、俺も秀臣(ひでおみ)さん達が大好きだから、好かれてるなら嬉しいです」 初対面の人が見てもわかるなんて、どれだけ俺の事を好きでいてくれるんだろう…。 俺はちょっとくすぐったい気持ちになった。 「環生は本当に可愛いなぁ。秀臣たちはベッドでも環生を大切にできているかい?」 「え、えっと…///」 ベッドで…って事は、ソッチの事だよね。 誠史(せいじ)さんは知ってるのかな…。 俺と体の関係があるって事…。 「あぁ、大体は把握しているつもりだよ。いつも環生が3人の相手をしてくれてるんだろう」 「はい…。3人ともすごく優しくて…いつも大切にしてもらえて幸せです」 皆の父親にそんな事を話すなんて恥ずかしかったけど、俺もそれを望んでるし、幸せな気持ちで抱かれている事も伝えたかった。 「そうか…ありがとう。息子たちの側にいてくれて」 「お礼だなんてそんな…///いつも俺が皆の側にいさせてもらってるんです」 皆が俺の居場所を作ってくれたから、今の俺がある。 感謝する事はたくさんあるけど、感謝される事なんて一つもないと思った。 「いつも家に環生がいるのが、息子たちの癒しなんだ。いつ帰ってくるかわからない父親、自分たちを置いて家を出た母親。息子たちは背中ばかりを追い求めているからね」 誠史さんの言葉にハッとした。 俺が困っていないか見守ってくれる秀臣さん。 すぐに抱きしめてキスをして、愛情を伝えてくれる麻斗(あさと)さん。 事ある毎に俺ばかり追い回す柊吾(しゅうご)。 3人が過保護なくらい俺を大切にしてくれる理由がわかった気がした。 皆はもう誰も失いたくないんだ。 目を離したら俺まで消えてしまうんじゃないかって不安なんだ…。 特に柊吾は恋人も亡くしてる。 柊吾、ごめん…。 洗濯物を干してる時も、お風呂掃除をしてる時もずっとついてくる柊吾。 柊吾といるのも好きだけど、たまには1人になりたいって思ってた。 相手するの面倒臭いとか思ってごめん…。 「俺…3人の存在に癒されてます。3人と暮らすようになって、自分の事が好きになりました。俺でよかったら、これからも皆の側にいさせてください」 「ありがとう。あんな息子たちだけど、これからもよろしく頼むよ」 安心したような嬉しそうな誠史さんの穏やかな瞳。 俺の存在が間接的に誠史さんの安らぎに繋がるのかと思うと、嬉しかった。

ともだちにシェアしよう!