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第4章 第10話
うわあぁ、ドキドキした。
勢いでここまで来てしまったけど、今夜は誠史 さんと2人きり。
夜眠るのも一緒。
鏡の中の俺は真っ赤な顔をしていた。
俺は男の人が恋愛対象だし、いつも麻斗 さんとお風呂でエッチな事をしてるから、お風呂のお誘いに必要以上に反応してしまった。
もちろん俺だって男の人なら誰だっていい訳じゃない。
でも、半日一緒に過ごしてきた誠史さん。
尊敬できるところも素敵だなぁって思うところもたくさんあった。
そんな人とお風呂に入って、ちょっとイイ雰囲気になったら、その気になってしまいそう…。
お風呂中に勃っちゃったらどうしよう///
このまま隠れていたい気もするけど、いつまでもここにいたら不自然だし、心配をかけてしまう。
俺は気合を入れるために、ざぶざぶと顔を洗った。
ただ一緒にお風呂に入るだけ、それだけの事…と、心の中で呪文のように繰り返しながら。
裸を見たらドキドキしそうだから見るのは控えめにて、なるべく人体だと思わないようにしよう。
そうしよう。
何度か深呼吸をした俺は覚悟を決めて、洗面所を出た。
お風呂へ近づくと、湯気の中から湯船につかっている誠史さんの背中が見えてきた。
いつも裸を見慣れてる同世代の皆とはまた違ったシルエット。
太っている訳じゃないし、きっと鍛えてると思うけど、俺たちよりちょっと柔らかな肩や二の腕のライン。
その余裕がやけに色っぽく見えた。
「お待たせしました」
掛け湯をしてから湯船に近づくと手を差し伸べられた。
「滑るから手を」
「あ、ありがとうございます…」
そっと握った誠史さんの手の感触や形は秀臣さんの手にそっくりだった。
温泉は乳白色のにごり湯。
よかった、これならお互いの裸が見えないから大丈夫かも…。
一気に安心した俺は、とろみのあるお湯も、目の前に広がる穏やかな海も、誠史さんとのおしゃべりも楽しむ事ができた。
喜ぶ俺を見る誠史さんの嬉しそうな表情や時々向けられる優しい眼差しに、ちょっとだけ胸が高鳴った。
紳士な誠史さんは俺の体のキスマークを見ても何も言わなかったし、話題は景色やこの後の食事の事だったから、全然エッチな展開にならなかった。
それでよかったし、それが当たり前。
何かを期待してた訳じゃないけど、何もないのも少しだけ淋しかった。
夕食は旬の食材や、地元の新鮮な魚介類を使った豪華な食事。
美味しい地酒も味わいながら楽しいひと時を過ごした。
食後は誠史さんに誘われて部屋のテラスへ。
星空を眺めながら夜風に当たる。
ほろ酔いの頬に触れる海風が気持ちいい。
地酒も口当たりがよかったし、浴衣姿の誠史さんのセクシーな胸元が気になってついつい飲み過ぎてしまった。
ふわふわしていい気持ち。
だんだん人肌が恋しくなってくる。
ちょっとだけなら甘えてもいいかな…。
俺は隣に立つ誠史さんの肩に頭を乗せた。
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