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第4章 第13話
「環生 も抱きしめてくれるかい?」
「はい…。俺でよければ喜んで」
抱きしめ合ったまま、2人で布団に横になった。
誠史 さんに腕枕をしてあげて、包み込むように抱きしめた。
「体勢…辛くないですか?」
いつも腕枕は『してもらう派』だから、上手くできてるのかよくわからない。
「大丈夫だ、ありがとう」
誠史さんは俺の腕の中でモゾモゾしながら、遠慮がちに体を寄せてきた。
照れて恥ずかしそうな表情。
か、可愛い…///
どうしよう…、普段は落ち着いてるのに、ベッド限定で甘えてくる年上オジサマ最高かも。
「息子たちに、こうやって環生に甘えたのは内緒にしておいてくれるかい?」
やっぱりそこは気にするんだ…。
ちゃんと父親の威厳を保とうとしてる感じがますます可愛い///
「もちろんです。誠史さんと俺だけの秘密です」
安心して欲しくて、誠史さんの髪を撫でて、おでこにキスをした。
「一晩中こうしてますから…このまま眠ってください」
最初は緊張した様子の誠史さんだったけど、俺の腕枕に慣れたのか、少しずつ体の力が抜けていくのがわかる。
その様子や温もりに俺もホッとする。
柊吾 がいつも俺に腕枕をしてくれる時、こんな気持ちなのかな…。
俺の事守ろうとか、可愛いとか思ってくれてるのかな…。
今までは甘えん坊な俺のためにしてくれてると思ってたけど、柊吾も俺の温もりに安心してくれてるのかな…。
ちょっとだけ柊吾を恋しく思いながら、おやすみなさい…と声をかけた。
ふと、話し声がした気がして目を覚ます。
声の主は腕の中の誠史さん。
俺はあのまま眠っていたらしい。
「……愛してる…」
優しくて甘い囁き。
よく聞き取れなかったけど、女性の名前を呼んだ気がした。
奥さんの名前かも知れない…。
胸がドキン!と跳ねて焦った。
だって今俺は抱き枕係だから。
何も見ない、聞かないって約束したから、寝たふりを続けた。
「幸せにすると約束したのにすまなかった…。もう少し早く向き合えていたら…。結局何もしてやれなかったけど、愛する気持ちは変わらない…」
誠史さんの懺悔と後悔の言葉。
俺は胸が苦しくなった。
泣きそうになるのをぐっと堪えた。
きっと俺が眠るのを待って紡がれた言葉。
「愛してる…」
誠史さんは俺を抱きしめながら謝罪の言葉と愛してるを繰り返した。
秀臣 さん達もだけど、誠史さんもそう。
親子揃って皆不器用。
優しくて才能もあって、ビジュアルもよくて…人生の成功者として、欲しい物なんて望めば何でも手に入りそうなのに、皆淋しさを抱えてる。
だから…皆の側にいたくなる。
そんな皆が愛おしいし、皆にも俺を必要として欲しいって思う。
それに、結婚って不思議。
こんなに愛していても上手くいかないなんて。
『好き』だけでは難しいのかな…。
いつか俺にもこんな風に俺を愛してくれる人が現れるのかな。
こんな風に愛せる人に巡り逢えるのかな…。
そんな事を考えていたら、誠史さんの寝息が聞こえ始めた。
よかった、眠ってくれて…。
明日には元気になっててくれたらいいな。
俺はそんな事を思いながら眠りについた。
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