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第4章 第26話

誠史(せいじ)さんがこっちへ来て3日がたった。 せっかく帰ってきてくれたし、誠史さんがそうしたいって言ってくれるから俺は毎晩誠史さんと眠ってる。 俺の体が気に入ったらしく、毎晩熱烈に求めてくれる。 嬉しいし楽しいし、気持ちいいけど、さすがに夜は寝かせて欲しくなってきた。 「なぁ、父さんいつまでいるんだよ」 朝、眠い目をこすりながら歯磨きをしていたら、後ろから柊吾(しゅうご)に抱きしめられた。 この家の住人は不意打ちで俺に触れてくるから、割と慣れっこ。 「うーん、たぶんもう帰っちゃったんじゃないかな」 俺が口をゆすぐと、柊吾がタオルで口元を拭いてくれる。 朝から優しいなぁと思っていたら、正面から抱きしめられてキスされた。 触れるだけじゃない、舌を絡める濃厚な口づけ。 「しゅ、柊吾…///」 こんな共有スペースで本気でイチャつくのはちょっと…。 まだ顔も洗ってないし…。 「今朝はまだ誰ともしてないだろ。今日初めてのキスは俺がよかった」 柊吾はちょっと淋しそうに笑って、ごめんな…と、俺を解放してくれた。 何、それ…。 そんな事されたらキュンとしちゃう/// 「それはそうと何だよ、その曖昧な答え。父さんどこ行ったんだよ」 「うん…。夜中に深刻そうな表情で仕事の電話してたのは知ってたんだけど…。目が覚めたら誠史さんいなくて…。玄関にも靴がないから、きっと帰っちゃったのかなぁって…」 ありのままを話すと、柊吾がふぅ…と息を吐いた。 「挨拶もなしかよ。まぁ、肝心な事何も言わない父さんらしいけど」 柊吾は特に驚いた様子もなく、誠史さんの帰国を受け入れた様子。 さすが長年誠史さんの息子やってるだけはある。 「環生(たまき)…大丈夫か?」 「えっ、何が?」 「いや…お前、父さんの事気に入ってたみたいだから…」 優しい柊吾は俺が淋しがってないか心配してくれたんだ。 確かに1人で目を覚ました朝は淋しかったけど、いつも別れ際はあっさりしてる誠史さん。 だから妙に納得してる自分もいた。 「うん…大丈夫だよ。俺の居場所はここだから。ここで誠史さんの帰りを待つよ」 「何だよ…父さん、この家にいなくても環生を独り占めするのかよ…」 ふてくされた様子の柊吾。 「お前、ずっと父さんが独り占めしてただろ。今までは俺たちの環生だったのに。お前は父さんに抱かれてたからいいだろうけど…」 「そんな事ない。俺も柊吾と過ごしたいしエッチな事もしたいよ…。誠史さんとのセックスと柊吾とのセックスは別物。誰も柊吾の代わりなんてできないよ」 大切に可愛がられるのも好きだけど、M気質な部分もあるからちょっと強引にされちゃうのも好き。 それは俺の事をちゃんと理解してくれてる人限定だけど。 そのあたりのさじ加減は柊吾が一番上手。 秀臣(ひでおみ)さんはエッチな衣装でセックスするっていう新しい世界を見せてくれたし、麻斗(あさと)さんは体を繋げなくても愛し合えるっていう愛の形を教えてくれた。 だから誰も誰かの代わりなんてできない。 「そんな事言うなら…環生から抱きついてキスしてくれよ」 柊吾が素直すぎて驚いた。 本当に…淋しかったのかな。 ちょっと可愛い…と思いながら、改めて柊吾の顔を見たら急に恥ずかしくなってしまった。 早くしろよ…と言いたげな柊吾。 恥ずかしさを堪えながら腰に両手を回して抱きつくと、チュッと下唇にキスをした。 久しぶりの柊吾の温もりが何だか新鮮。 柊吾も真っ赤な顔をしていた。 「何だこれ…。恥ずかしすぎるだろ///」 「お、俺も恥ずかしいよ///」 もっとエッチな事もたくさんしてるのに、久しぶりのキス一つで照れている自分たちがだんだん可笑しくなってきた。 「柊吾も抱きしめて…。キスして…」 「環生…」 瞳を閉じてついばむような柊吾のキスを受け入れる。 俺からもそっと唇を寄せる。 顔を洗いにきた秀臣さんに見られても柊吾は俺を抱きしめたままだった。 「すまない、邪魔をした」 おはよう、環生…と、俺の髪にキスをする。 「よかったな、柊吾」 柊吾の頭をひと撫でした秀臣さんは満足そうな顔をして行ってしまった。 秀臣さんに申し訳ない事をしちゃったな…と思っていたら、柊吾も気まずそうな顔をしていた。 「なぁ、環生」 「ん…、何?」 柊吾はそっと俺の耳元に唇を寄せた。 「なぁ、今日どこか行かないか。俺も…環生と出かけたい」 恋人を亡くしてずっと引きこもっていた柊吾が、そう囁いた。

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