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第5章 第20話

(ごう)さんとの価値観の違いで悲しい思いをしてから一週間がたった。 あの日、お腹がはち切れそうなほどやけ食いした俺は、皆に甘えきった後、幸せな気持ちで眠りについた。 次の日、自分の部屋の布団で目を覚ましたら、3人が一緒に雑魚寝していてくれた。 きっと俺が淋しい思いをしないようにだと思う。 眠ってる時も側にいてくれたのがすごく嬉しかった。 俺は最近の自分の行動を反省した。 ちょっと節操なしだったな…って。 皆とのセックスで悦びを知ってしまった俺は、我慢できなくてその場の勢いで昔好きだった同期の(さとる)や、皆のお父さんの誠史(せいじ)さんとエッチな事をした。 悟はよく知ってる人だったけど、誠史さんは初対面。 だけど、皆のお父さんだからって安心してた部分もある。 でも、お隣に住む豪さんは、誰とも繋がりがない完全に初対面の人。 偶然体の相性がよかったから事後以外は幸せだったけど、セックスが合わない可能性だってあった。 豪さんが危ない人だったら、監禁されて乱暴されてたかも…。 そう考えたら一気に怖くなってしまった。 それに、セックスの後に放置されたのが本気で悲しかった。 今回の事で懲りたから、これからはちゃんと相手の事を知るまでセックスするのやめよう…と、心に固く誓った。 でも、早く気づいてよかった。 豪さんを好きになってしまう前に離れる事ができて。 だって、一方的に豪さんを愛してしまったら、どんなに冷たくされても耐えるしかないだろうから…。 そう言えば、泣いてる俺に優しくしてくれたあの女性はどうしただろう…。 今は笑ってくれてたらいいな…。 いつものように皆で朝ご飯を食べて、食器の片付けをしていると秀臣(ひでおみ)さんがやってきた。 「環生(たまき)、ちょっといいか」 内緒話みたいな小さな声。 秀臣さんが身を屈めて耳打ちしようとするから、食器を洗う手を止める。 「環生、今すぐ俺の部屋に来てくれないか」 「えっ、今すぐ?」 「すまない、急ぎなんだ」 秀臣さんは濡れたままの俺の手を引いて自分な部屋へ連れていく。 いつもそんな強引な事しないから戸惑ってしまう。 急にどうしちゃったんだろう…。 廊下を見渡して誰もいない事を確認すると、急いで扉を閉めて鍵をかけた秀臣さん。 皆に聞かれたくない話でもあるのかな…。 「環生、ちょっと付き合ってくれないか」 秀臣さんは、いきなりカチャカチャとベルトを外してスラックスを脱ぎ始めた。 まさかの急展開。 も、もしかしてムラムラしちゃったの…? 秀臣さん、朝から元気なんだから/// 「たくさんキスしてトロトロにしてくれたら付き合います///」 ドキドキしながら一歩近づくと、秀臣さんが不思議そうな顔をする。 えっ…、セックスのお誘いじゃないの…?? 今度は俺が不思議そうな顔をする番。 よくよく聞くと、秀臣さんの肛門の近くに『おでき』ができてしまったらしい。 下着が擦れて痛くてたまらないから様子を見て欲しいとの事だった。 そんな事、家族の麻斗(あさと)さんか柊吾(しゅうご)に頼めばいいのに。 他人の俺にこんな恥ずかしい場所見せるなんて嫌じゃないのかな…。 「環生は俺の裸を見慣れているからな」 確かに裸は見慣れてるけど、秀臣さんの肛門付近なんてほとんど見た事ない。 秀臣さんはよく俺のお尻を見たり舐めたりしてるけど…。 でもきっと本当に切迫詰まってるんだろう。 それに、こんな機会でもないと秀臣さんのお尻を見る事もないだろうし。 人助けをしたい気持ちと好奇心がミックスされた俺は、おできチェック係を引き受ける事にした。 「秀臣さん、四つん這いになって…」 俺は秀臣さんを気づかいながら優しく声をかけた。

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