134 / 420
第5章 第24話side.麻斗
〜side.麻斗 〜
「とりあえず環生 をお風呂に入れてくるから、秀臣 たちは机の上を片付けて」
そう告げて環生をお風呂場へ逃がす。
今、秀臣や柊吾 と一緒にお風呂へ行かせる訳にはいかない。
きっとお風呂でセックスを始めてしまうから。
酔った状態の環生を1人にするのも危ないから一緒に入ろうとすると、環生はほわほわと嬉しそうに微笑んだ。
「今日は麻斗さんが洗って…」
「いいよ、座って…」
お風呂のイスを示すと、首を横に振った環生は俺にお風呂マットに座るように言った。
俺の膝に乗るつもりだな…と思って胡座をかくと、予想通り。
ちょこんと俺の膝に乗ると、俺の胸を背もたれにしてくつろぎ始めた。
俺のお気に入りのボディーソープを泡立てながら環生の様子を伺うと、桃色の小さな胸の先がぷくっと膨らんでいた。
触れて欲しそうに色づく尖りに軽い興奮を覚えた。
でもこのまま手を出したら、秀臣たちと同じだ…と思い、見て見ぬふりをして左腕から順番に体を洗っている時だった。
「ごめんね、麻斗さん」
「何がごめんねなの?」
「ん…麻斗さん、エッチな事する気なんてないのに無理矢理巻き込んじゃったから…」
「そんな事ないよ。可愛い環生を見ていたらその気になってきたよ」
ツン…と、指先で胸をつつくと、恥ずかしそうに頬を染める。
「麻斗さん。俺…本当はね、利きセックスがしたい訳じゃないんだ…」
環生の意外な言葉。
やる気満々だと思ってたから驚いた。
「…そう思ってるのにどうしてするって言ったの?」
「遊びじゃないって証明したいから。俺ね…、本当は悲しかった。柊吾に俺のしてるセックスがただの性欲処理だって思われてた事が…。誰彼かまわず抱かれてる感じだけど、抱かれたいと思った人にしか抱かれてない。俺にとってセックスは気持ちと体を繋げる特別な行為なの」
そこまで一気に言葉にした環生は、ふうっと息を吐いた。
「俺を抱いた人が俺を想ってかけてくれた言葉も、どんな風に触れてくれたかも、忘れる訳ない。全部大切な思い出なの…。それを軽く思われてた事が悲しくて悔しくて…。だから目隠しをしたまま誰に愛撫されてるかを全部当てて、遊びじゃないって証明したいの」
そう言って甘えるみたいに俺の首筋に頰ずりをしてくるけど、言葉には強い決意が秘められていた。
「利きセックスなんて…する事はゲームみたいだけど、俺は真剣。おじいちゃんになっても今日のセックスの事…忘れないよ」
そう言って抱きついてくる環生の愛らしさ。
エッチな事や甘える事が大好きな環生。
もう少し流されるまま軽い感じでセックスしてるかと思ったら、予想以上に大マジメだった。
そんなに俺たちとの時間を大切に思ってくれていたなんて…。
「ありがとう、環生」
「ううん…俺は何も。麻斗さんが俺を大切にしてくれたから、忘れたくない、ずっと覚えていたいって強く思うようになったし、こうやって触れ合う事が宝物の時間になったんだよ…」
微笑んだ環生がそっと瞳を閉じる。
その仕草や表情があまりにも尊くて、胸の奥から温かな感情が湧き上がってくるのがわかる。
俺は吸い寄せられるように、唇を寄せた…。
ともだちにシェアしよう!