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第6章 第5話(※)

『今すぐ環生(たまき)を抱きたい』 甘さと優しさの中にちょっと切なさの混じった柊吾(しゅうご)の声。 その声に胸がドキドキして、お腹の奥がキュウっと疼いた。 「…俺も、柊吾に抱いて欲しいよ」 離れ離れだから無理な事はわかってる。 でも、柊吾の気持ちに寄り添いたかった。 俺も同じだよ…って伝えたかった。 『電話でするか』 本気か冗談かわからない柊吾の提案。 電話をしながらエッチな事をするなんて恥ずかしい。 でも、ちょっと興味はある。 「恥ずかしいよ…」 『環生は恥ずかしいと興奮するんだろ?』 「それは…そうだけど…」 俺が嫌だって言わないから、柊吾はテレフォンセックスする気でいるんだと思う。 テレフォンセックスってどんな感じでやるんだろう? オナニーしてるところを聞かせ合うとかそんな感じ? 「柊吾…した事あるの?」 『ある訳ないだろ…そんなヤラシイ事』 「…俺にはヤラシイ事するの?」 柊吾のエッチ…って、からかってみるけど、俺にはしようって思ってくれる限定感が嬉しい。 俺には本心を見せてくれるって事だから。 こんな機会もなかなかないから、してみようかな…。 『どうする、環生』 「する…。一緒にしよ、柊吾」 柊吾を誘うように囁くと、柊吾は返事のかわりにキスをしてくれた。 『よし、今から環生に覆いかぶさるぞ』 「うん…」 左手にスマホ、右手は柊吾の枕。 どうやら柊吾が、する事を言葉にしてくれるらしい。 柊吾が覆いかぶさってくるのをイメージしながら、布団に横になった。 『唇にキス…するぞ』 「うん…」 いつものセックスの時みたいに、柊吾がリードしてくれる。 俺はドキドキしながら柊吾の言葉を待つ。 チュ…と、リップ音が聞こえる。 それに合わせて、抱き寄せた枕にそっとキスをする。 唇に触れる柔らかな布の質感。 ふわりと香る柊吾のにおい。 何度も何度もキスをしてくれるから、俺からもしたくなってチュッとキスをした。 柊吾みたいにキレイなキス音が出ると思ったけど、そうでもなかった。 何か特別な技術が必要なのかな…。 『次は首筋と鎖骨にキスするぞ』 いつもされてるのを想像しながら、瞳を閉じてチュ…チュ…と、響く音に耳を傾ける。 口づけられると、だんだん体が火照ってきて、甘い吐息がこぼれる。 柊吾の言葉とリップ音だけで、こんなにも感じるなんて…。 『今、どんな感じだ?』 「いい気持ち…。ふわふわして嬉しい」 『今日の環生…いつもよりちょっと素直で可愛いな』 「そう…かな」 離れてる分、いつもよりちょっとだけ柊吾が恋しいのかも。 『ん…、声とか言葉づかいとか、何となくな』 「うん…」 きっと今、柊吾の腕の中にいたら頭を撫でてくれるはず。 枕に頭を押しつけて、撫でてもらってる感じをイメージしてみる。 『続きしていいか』 「うん…。」 『胸にキスして舐めるぞ。左胸からだ』 本当に胸を舐められてるような湿った音がする。 それが俺の鼓膜を刺激して、体がゾクゾクする。 我慢できなくて、スウェットの裾から右手を入れて直接左胸に触れた。 「んんっ…」 『環生…、もしかして自分で触ってるのか』 「うん…」 『環生の胸、どうなってる』 「ぷっくりしてる…。柊吾に舐められて硬くなってる」 自分の体に起きてる事を言葉で伝えるのが恥ずかしいし難しい。 でも、言わないと伝わらない。 きっとエッチな事を言ったら柊吾がムラムラして、もっと気持ちよくしてくれるから頑張る。 それに、電話だとエッチな事を言ってる顔を見られずに済むから、ちょっと大胆にもなれる。 『次は右胸にキスしながら指先で左胸を…』 「ま、待って…。片手で電話持ってるから、手が塞がって上手くできない…」 段取りがわからなくてオロオロしてたら、柊吾が電話の向こうでちょっと吹き出した。 『スピーカーモードにできるか?テレビ電話でもいいぞ』 「テレビ電話は恥ずかしいからスピーカーモードがいいな…」 そう伝えながら、こっそり引き出しからイヤフォンを取り出してセットする。 せっかくだから耳元で柊吾の声が聞きたい。 エッチな事を囁く声も、感じる吐息も全部聞きたい。 『ヤル気満々だな』 「柊吾とだからしたいの」 早く続きして…って可愛くおねだり。 『両胸愛撫するぞ』 また聞こえてくる柊吾のちょっと低めのエッチな声。 空いた両手で胸の先を撫でたり、揉んだり。 根元をつまんだまま先端をカリカリ引っかくと、気持ちよくて腰が揺れる。 「柊吾、俺もする…」 柊吾にも気持ちよくなって欲しい。 俺だけが楽しいのなんてつまらない。 フェラされてる気分になって欲しくて、指をペロペロ舐めてみた。 でも全然音がしない。 これじゃ興奮してもらえない。 唾液をいっぱいためて指をしゃぶったら、さっきよりそれっぽい音がした。 『その音、エロいな…』 興奮する…って言葉の後に、バサバサとかゴソゴソとか聞こえ始めたから、もしかしたら柊吾が脱いでるのかも…。 見たいな…柊吾の裸。 柊吾の引き締まった体を思い浮かべながら、自分の指を咥える。 興味本位で口の中の性感帯を擦ってみたら、気持ちよくて頭がとろけそう。 柊吾の硬くて大きいので擦って欲しくてたまらない。 『聞こえるか、環生』 耳を澄ますと、クチュクチュ…と、柊吾が扱いてる音がする。 いつもはしゃぶるのに夢中でよく聞こえないけど、イヤフォンが微かな息づかいまで拾ってくれる。 俺のフェラで柊吾が感じてるのが嬉しい。 「聞こえる…。柊吾のエッチな音、聞こえてるよ」 『環生も聞かせろよ』 「うん…」 スウェットの下とパンツをまとめて下ろす。 もう濡れてる先端を撫でてから、ゆっくり扱く。 「あぁん…柊吾…」 『すごいな、濡れてグチョグチョだぞ』 「だめ…声に出しちゃだめ…」 『本当はだめじゃないだろ…』 そんな色っぽい声で囁かないで…。 絶対わざと。 俺が柊吾のその声に弱くてドキドキするの知ってて、いつもより低めのゆっくりしたトーンで話すなんて。 それは最高の俺へのご褒美。 囁かれる度嬉しくなるし、今日はイヤフォンをつけてるから、ダイレクトに鼓膜に届く。 鼓膜を通った声は、とろけた甘さになって体中に伝わっていく。 「柊吾の声でエッチな事囁かれるとだめなの…」 『胸の先も、下も触って欲しそうに勃ってるぞ』 「もう、だめだってば…」 必死にだめだめ言ってるけど、本気の『だめ』じゃない。 恥ずかしくてだめって言っちゃうだけ。 本当はもっといっぱいして欲しい。 「柊吾…」 『どうした、環生』 「一緒に扱いて…。柊吾と一緒に気持ちよくなりたい」 返事は大きめのリップ音だった。 枕を顔の上に乗せたまま、胸をこねるように揉みながら右手を動かす。 柊吾の吐息や、グチュグチュと濡れた扱く音を聞いてると、もうそれだけでイッてしまいそう。 瞳を閉じて柊吾のにおいも楽しみながら、夢中で手を動かしていく。 「あぁん、柊吾…。手が止まらないよぅ…」 『止めなくていい。俺も一緒だ』 環生…と、切迫詰まったような声で呼ばれる名前。 距離は離れてるけど、気持ちはすぐ側にいる。 俺と柊吾は今、一つになってる…。 『環生…イケそうか?』 「うん、もういつでも大丈夫…」 指に力を入れてちょっと強めにしたらすぐに弾けてしまいそうな俺自身。 柊吾は今どうなってるの…? 『イッて…いいか』 「うん、俺もイキそう。柊吾、イカせて…」 ハァハァと聞こえてくる荒い息づかい。 2人で息を合わせて一緒に昇りつめていく。 「あぁっ、柊吾…。柊吾!」 『環生…イク…!』 「…俺も…ぁ…あぁぁんっ…!」 俺たちは、お互いの名前を呼び合いながら、ほぼ同時に絶頂を迎えたんだ…。

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