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第6章 第6話side.柊吾
〜side.柊吾 〜
「環生 …」
『柊吾…』
はぁ…とこぼれる環生の満足そうな甘い吐息。
それを聞いた俺はホッとした。
環生がいつも俺の腕の中でイッた時と同じだから。
電話越しだから本当に環生がイッたのかわからない。
もしかして俺に合わせてイクふりをしたのかも知れない。
それだけが不安だった。
「可愛かったぞ、環生」
ありがとな…と、伝えてリップ音を1回。
『俺も…ありがと…』
イッた後のちょっと舌ったらずで甘えた声の環生は格別だ。
この世の中にこれ以上可愛い生き物なんて存在しないだろうと本気で思う。
枕元に置いてあったティッシュで精液まみれの右手を拭った。
予備知識もないまま勢いで始めたテレフォンセックス。
これが正解だったのかわからない。
でも、少なくとも俺は最高に気持ちよかった。
環生の声だけで、こんなに興奮するとは思わなかった。
「いっぱい出たか?」
『うん…、出たよ』
環生もティッシュで後始末をしているようだ。
今ここに環生がいたら、全部舐めてキレイにしてやりたい。
腕枕をして髪を撫でながらぎゅっと抱きしめてやりたい。
『柊吾…もうお風呂入った?』
眠そうな環生の声。
「まだだけどいいぞ。環生が寝たら入る」
だから寝ていいぞ…と声をかけると、環生がふふっと笑う。
『柊吾には全部お見通しだね』
「まぁな。知り合い期間は短いけど、一緒にいる時間は長いからな」
最初は他人が家にいるのも嫌だった。
いつの間にか環生がいるのが当たり前になった。
その環生がこんなに大切な存在になるなんて思いもしなかった。
『柊吾がいいって言うから、本当に寝ちゃおっと』
モゾモゾと布団に潜り込んでいく音がする。
俺には遠慮しない環生が可愛い。
うとうとしながら今日見たテレビの話や、宅配ピザの話をする環生。
俺が出歩くなって言ったからピザを注文したんだろう。
確かに出歩いてはないが、知らない奴相手にドアを開ける方が不用心すぎる。
しかも家も顔も連絡先もバレる状態で。
そっちの方が危ないだろ…。
年上で、気配りができてしっかりしてそうなのに、甘えん坊で淋しがりやでどこか危なっかしい環生。
でも、それも環生の魅力。
そんな環生をフォローする事で、俺は俺の価値を見出せてるんだと思う。
恋人を亡くしてから、この世界は理不尽で俺は無力だと思い込んでいた。
いくら努力をしても何も変わらない。
恋人は戻って来ない。
そんな絶望に近い諦めを抱いて、ただ呼吸だけをして生きてきた。
そんな俺に環生は役割をくれた。
環生の世話係だ。
『…柊吾?』
「あぁ、悪い」
『なぁに?柊吾も眠くなっちゃった?』
環生の優しい笑い声。
この笑い声や笑顔を守るためなら俺は…。
そう思いながら、そっとスマホに口づけた…。
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