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第6章 第7話

次の日の午前10時過ぎの事。 今日もいい天気。 あと9時間くらい待ったら皆に会える。 昨日は柊吾(しゅうご)と電話でセックスをして、ふわふわいい気持ちのままおしゃべりをして…気づいたら朝だった。 目が覚めた時も柊吾の枕を抱きしめていた俺。 ちょっとヨダレを垂らしちゃったから洗濯しておかなくちゃ。 遅めの朝ご飯を食べながらボーっとしていたらインターホンが鳴った。 誰だろう…と思いながらモニターのぞくと配送屋さん。 俺宛の荷物は麻斗(あさと)さんからの宅配便だった。 開けてみると、中身はお好み焼きの食材セット。 粉やキャベツ、お肉も卵も全部入ってる。 中にはメッセージカード。 『今日の夜は5人でお好み焼きパーティーをしよう。すぐに帰るからもう少し待ってて。  麻斗』 麻斗さん…。 きっと訃報を聞いた時に、すぐ手配してくれたんだ…。 俺が淋しくないように。 1人の時間を持て余さないように。 パーティーの準備をしながら皆の帰りを楽しく待てるように…。 5人って事はきっと誠史(せいじ)さんも一緒。 皆でお好み焼きパーティーするの楽しそう。 俺は冷蔵庫や食品棚の食材を使って浅漬けや、おつまみになりそうなおかず、スープを作る事にした。 ビールも冷やしておかなくちゃ。 誠史さんもきっと1泊くらいはしていくはずだから誠史さん用の布団を干した。 念入りにお風呂やトイレも掃除して、それからそれから…。 あぁもう、9時間じゃ足りないかも。 準備の合間にも、皆がそれぞれに連絡をくれたから全然淋しくなんてなかったし、あっという間に夜になってしまった。 「お帰りなさい、皆」 4人がそれぞれスーツケースとお土産を持って帰ってきた。 明日の洗濯大会は、かなりやりがいがありそう。 「環生(たまき)、帰ったぞ。淋しくなかったか」 「お帰りなさい、秀臣(ひでおみ)さん。うん大丈夫だったよ」 連絡も控えめだった秀臣さんだけど、真っ先に俺を抱きしめてくれた。 キスしたそうな顔をするから、軽いのかと思って瞳を閉じる。 大きな手で顎をしっかり固定される、予想以上の熱烈なキスだった。 「秀臣、環生待ちの列が玄関の外まで延びてるから…」 麻斗さんに促されて、秀臣さんが淋しそうに家へ入っていく。 秀臣さん、淋しかったのかな…。 「ただいま、環生。待っててくれてありがとう」 「麻斗さん、お帰りなさい。お好み焼きセットありがとう」 麻斗さんもぎゅっと抱きしめて、顔中にキスしてくれる。 「麻斗、早くしろよ」 柊吾に促された麻斗さんは、名残惜しそうに俺のおでこにキスをして家の中へ。 「環生…」 柊吾はただいまも言わずに俺を腕の中に閉じ込めると、背中を撫でたり、お尻を揉んだり。 「ちょ、柊吾…」 玄関でいきなりそんな大胆な事…。 「半日ぶりの環生だ」 耳元で囁かれる柊吾の『ただいま』 「お帰りなさい、柊吾。柊吾とは電話で会ったもんね」 お返しに俺も柊吾のお尻を揉んでみた。 ドアの閉まる音と、咳払いが一つ。 誠史さんだ。 柊吾にまた後でね…と伝えて、中へ促す。 「誠史さん、お帰りなさい…」 久しぶりに会えたのが嬉しくてぎゅっと抱きついた。 「ただいま、環生。元気にしてたかい?」 「うん、してたよ。誠史さん、もっと顔を見せて…」 両手でお互いの頬に触れる。 元気そうな誠史さんの優しい笑顔。 時間を忘れて再会のキスを楽しんでいると、3人が様子を見に来た。 「父さん、いくら父さんでも環生の独り占めはだめだよ」 「環生は皆の環生だからな」 「環生も父さんにくっつきすぎだろ」 「仕方ないだろう?環生は俺の事が一番好きなんだ。なぁ、環生」 自信満々の誠史さんは全然キスを止めてくれない。 皆に取り合いされるのは恥ずかしいけど、ちょっと嬉しい。 「寒いから中に入って。すぐに温かいお茶を入れるから」 俺は幸せ気分で皆に声をかけた。

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