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第6章 第8話
俺へのお土産は、皆がそれぞれ選んで買ってきてくれた。
秀臣 さんはお漬物、麻斗 さんはフルーツケーキ、柊吾 はお煎餅。
誠史 さんはイギリスで買ってきてくれたボディクリームと、空港限定の可愛い瓶に入ったコーヒーキャンディー。
一度にこんなにたくさんお土産やプレゼントをもらうのは初めて。
こんなに贅沢させてもらっていいのかな…。
申し訳ない気持ちと、皆が俺のために貴重な時間とお金を使って用意してくれた喜びが入り混じる。
皆がプレゼントしてくれる愛情も、お土産も全部大切にしよう。
与えられる事に慣れて、それが当たり前だと思わない自分でいよう。
これからもずっと感謝の気持ちを忘れないでいたい。
俺はそんな皆のために張り切ってお好み焼きを焼く。
リビングのテーブルにホットプレートを置いて、皆の話を聞きながら。
本来だったら誠史さんの席なんだけど、ほとんど家にいたいから普段は俺が座らせてもらってる席。
今日は誠史さんがいてくれるから、イスも喜んでるんじゃないかな…。
「環生 の席はここだろう?」
一緒に座ろう…と、誠史さんが膝を示す。
「そ、そんな…」
誠史さんにくっつけるのは嬉しいけど、膝に乗っていたら焼きづらい。
学生の頃、学祭でお好み焼きの模擬店を出した時、焼き方が上手いって誉められたから、ここは腕の見せ所。
それに…よく忘れちゃうけど、俺…家政夫だし。
皆が快適に暮らせるように尽くすのが俺の仕事。
「遠慮はいらない。俺が環生に座って欲しいんだ」
優しい笑顔でそんな事言われたら、決意が揺らいですぐにでも膝に乗りたくなる。
…って、だめだめ!
皆が見てるし、イチャイチャしてたらお好み焼きも焦げてしまう。
「父さん、環生が困ってるよ。せっかく環生が準備をして俺たちのために焼いてくれてるんだから…」
麻斗さんがさり気なく助け舟を出してくれた。
「環生は俺の席に座るといい。俺は部屋からイスを持ってこよう」
そう言って秀臣さんが立ち上がる。
「そんな事したら環生が余計に遠慮するだろ?俺と半分ずつ座ればいい」
こっち来いよ…と柊吾が俺を呼ぶ。
俺が座る場所を巡って大騒ぎ。
誰かの意見を取り入れると、誰かが淋しそうにするに決まってる。
仕方ないから簡易イスを持ってきて、順番に皆の隣に移動しながらお好み焼きを仕上げていく。
合間に触れるだけのキスをしたり、『はい、あーん』をしてお好み焼きを食べさせあったり。
美味しいって誉めてくれるから、頑張ってよかった。
皆も嬉しそうだけど、俺も嬉しい。
皆と一緒だと食事が楽しいし、量も食べられる。
お好み焼きやサラダを食べながら、皆が俺とお風呂に入りたいとか、一緒に寝たいって言い始めたけど、さすがにそれは分身でもしない限り無理だと思う。
「環生はどうしたい?環生が決めてくれ」
柊吾が自分を選んで欲しそうに言うけど、俺は皆の事が好きだし、誰と何をしてもきっとそれぞれに楽しいから『誰と』『何を』するかなんて決められない。
誰かを選ぶなんてできない。
でも、誰かと一緒に過ごしたい。
「俺には決められないよ…。そうだ、くじで決めようよ」
咄嗟に思いついたくじ引き大会。
さすがに子供っぽいかな…と思いながら様子を伺う。
「そうだね、そうすれば皆平等だね」
麻斗さんは『皆の意見』という名の欲望をまとめながら、あみだくじを作ってくれた。
俺とお風呂に入る権。
俺に膝枕で耳かきしてもらえる権。
俺にマッサージしてもらえる権。
俺と一緒に眠る権。
エッチな事をするかどうかは俺の気持ちを尊重してくれるらしい。
このメンバー以外、誰も喜ばなさそうな権利をかけて、あみだくじ大会をする事になった。
大の大人4人が何やってるんだろう…と思うけど、誠史さんも輪に入ってるのが微笑ましい。
俺がここへ来た時はぎこちない親子関係だったけど、だんだん打ち解けてきてる感じが嬉しい。
結局、お風呂は秀臣さん、耳かきは誠史さん、マッサージは柊吾、眠るのは麻斗さんに決まった。
秀臣さんとお風呂…楽しそう。
俺は熱々のお好み焼きを頬張りながらそう思った。
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