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第6章 第10話

秀臣(ひでおみ).さんとのお風呂の後は誠史(せいじ)さんとの膝枕耳かきタイム。 背の高い誠史さんがソファーに横になると、脚がはみ出してしまうから、なるべく隅に座る。 「楽しみだなぁ、環生(たまき)の膝枕」 誠史さんは俺を独り占めできるのが嬉しくてたまらない様子。 膝に感じる誠史さんの頭の重みと温もり。 どさくさ紛れに俺の腰を抱きしめて、お股に顔を埋めるから、急いで引き離す。 このまま野放しにしたらもっとエッチな事をされてしまいそうだから。 見た目は渋くて落ち着いてる素敵なオジサマなのに、中身はちょっと子供っぽい。 皆のお父さんなのに、この家の誰よりも自由で無邪気。 俺はそのギャップに弱い。 誠史さんといると、温かくて優しい気持ちがどんどん芽生えてくる。 愛おしさを感じながらゆっくり髪を撫でていると、リラックスした表情の誠史さんが瞳を閉じる。 「誠史さん、始めますね」 声をかけてから、そっと耳かきを差し入れる。 大切な耳だから、傷つけないように優しく、優しく…。 人に耳かきをするのなんて慣れてない。 緊張して手が震えるけど、だんだん穏やかな気持ちになってきた。 今まで膝枕耳かきなんて、さほど意味がないって思ってた。 する方は相手の耳の中なんて見づらいし、責任重大で怖い。 される方も『耳垢を取る』事が目的なら、自分でやった方が絶対キレイになるに決まってる。 力加減もわかって安全だし。 でも…今は嬉しい。 自分の両膝に大切な人が頭を預けてくれる事が。 だってそれは俺に心を許してくれてるって証だから。 耳の中に異物を入れさせるなんて信頼してる人にしかさせたくないはずだから。 それに、大切な人に何かをしてあげられるのが嬉しい。 幸せそうに瞳を閉じるその顔を見ているだけで幸せ。 膝枕耳かきは、抱きしめ合ったり、キスをしたりっていう愛情交換と同じ。 コミュニケーションの一つなんだと思った。 「ありがとう、環生。さぁ交代だ。環生も耳かきしてやろう」 体を起こした誠史さんは、俺のおでこにキスをくれた後どこかへ行ってしまった。 あれ?トイレかな…。 耳垢を拭き取ったティッシュの始末をしながら待っていると、戻ってきた誠史さんの手にはメガネケース。 誠史さん、メガネかけるんだ…。 隣に座った誠史さんは俺の疑問に気づいたらしい。 「シニアグラス…と言えば聞こえはいいが、ただの老眼鏡だよ」 環生の耳を傷つけるといけないだろう?と優しく笑う。 そうか…誠史さん、老眼なんだ…。 皆のお父さんだから年上のオジサマって認識はあったけど、老眼かどうかなんて気にもしなかった。 『老い』に対して考えた事はなかったけど、加齢と共に変わっていく体つきや衰えていく機能に、生き物としての歴史や愛おしさみたいなものを感じた。 いぶしたシルバーの細いオシャレなフレーム。 メガネをかける時の視線や仕草がやたらとセクシーで、つい見とれてしまった。 「誠史さん…カッコイイです」 「そうか、環生に誉めてもらえるなら老眼も悪くない」 誠史さんは嬉しそうに微笑んで、また俺のおでこにキスをしてくれた。 「ねぇ、誠史さん。はずすところも見せてください」 「急にどうした」 「だって…かける時、素敵だなぁって思って胸がドキドキしたから、はずす時もきっとキュン…ってするんだろうな…って」 俺のおねだりに少し困った様子の誠史さん。 「ごめんなさい…。誠史さんは生活に必要でメガネをかけてるだけなのに、それをエッチな目で見たりして…」 「いや、いいよ。少なくとも俺に謝る必要はない。環生が可愛くて困るなぁと思っていただけだから。メガネ一つで環生が喜ぶならいくらでもかけたりはずしたりしよう」 誠史さんは俺を膝に乗せると、目の前でメガネをはずしてくれた。 それは想像以上に色気を帯びていて、胸だけでなくお尻までキュンキュンした。 かけたりはずしたりする仕草を5回堪能させてもらった後は、大満足で横になって膝枕をしてもらう。 誠史さんの方を向いたままそっと瞳を閉じた。 「始めるぞ、環生」 「はい…お願いします」 誠史さんの指が耳に触れるだけで、心拍数が上がっていく。 耳かきの先がそっと触れただけなのに、体がビクンと反応してしまった。 「あっ…だめです、誠史さん。くすぐったい」 「環生は耳の中まで敏感なんだなぁ」 驚きと喜びが入り混じった誠史さんの声。 だって耳の中を愛撫されてるみたい。 耳の穴って性感帯なの…?って思うくらい。 耳かきで感じちゃうなんて恥ずかしい。 油断したらエッチな声が出てしまいそうだから必死に耐える。 耳かきが入ってる時に動いたら危ないから、ぎゅっと体に力を入れていると、視界に入ってる誠史さんの股間がだんだんふっくらしてきた。 「誠史さん…勃ってます」 「仕方ないだろう。可愛い環生が声を我慢してるのを見たら勃たない方がおかしい」 誠史さんは堂々と俺に欲情している宣言をする。 もう…誠史さんってば。 「さっきの環生と一緒だ。環生は耳かきをされているだけなのに、俺が勝手に環生をヤラシイ目で見てる」 嫌かい?…と、少しだけ不安そうな顔。 「好きじゃない人に性的な目で見られるのは嫌だけど、誠史さんならいいです」 むしろ…ちょっと嬉しいかも。って言うと、誠史さんが安心したように笑って髪を撫でてくれた。 「誠史さんのエッチ」 指先でツン…と先をつついて遊んでいると、誠史さんがちょっと真剣な顔になる。 髪を撫でる手が、だんだん首筋に下りてくる。 その触れ方がちょっとエッチで、少し落ち着いていたお尻の奥がまたキュッとなる。 誠史さん自身に触れて、しゃぶりたくなる。 「誠史さん…」 「環生…」 どうしよう…キスがしたい。 誠史さんの唇を…舌を味わいたい。 きっと物欲しそうな瞳で見てるんだと思う。 誠史さんの瞳にも雄の欲望がちらつき始めた。 「環生、風呂出たぞ」 …もう、いいところだったのに。 タイミングを見計らったかのように柊吾(しゅうご)の声がした。

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