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第6章 第12話

皆におやすみを伝えて、麻斗(あさと)さんと一緒に歯を磨いた。 「行こうか、環生(たまき)」 「うん…」 手を繋いで麻斗さんの部屋へ向かう。 いつもの恋人繋ぎだけど、今日はいつもよりぎゅっと握られてる気がする。 喜んでくれてるのかな…。 そう思うと心がくすぐったい。 「眠る前に環生を抱きしめてもいい?」 麻斗さんは俺をソファーに誘う。 「うん…」 抱っこのお誘いが嬉しい。 眠ってしまう前にもう少し一緒に過ごしたいって思ってたから。 いつものお姫様抱っこスタイル。 冷えるといけないから…と、麻斗さんお気に入りのブランケットで包んでくれる。 「やっと環生を独り占めできた」 優しく頬を撫でられると幸せな気持ちがあふれてくる。 「俺も麻斗さんを独り占め。ぎゅってして…麻斗さん」 俺からもくっついて2人だけの時間。 2人だけの世界。 「本当は夜に電話したかったんだけど、柊吾(しゅうご)が俺が電話するって張り切ってたから控えたんだ。でも環生が心配だった。淋しくて泣いてないかって…」 「麻斗さんが送ってくれたお好み焼きセットのおかげで、準備しながら楽しく待てたよ」 でも、本当はちょっとだけ淋しかった…って伝えると、俺を慰めるように頭を撫でてくれた。 「留守番を頑張ってくれた環生にご褒美をあげないと」 お土産を買ってきてもらえたのに、ご褒美まであるの? 麻斗さん、俺を甘やかし過ぎだよ…。 「ご褒美は何がいい?」 「…俺が決めていいの?」 「いいよ。言ってみて…」 面と向かって言うのは恥ずかしいから、麻斗さんの耳元に唇を寄せる。 「麻斗さんが嫌じゃなかったら、100回キスして…」 そんな事言ってる自分が恥ずかしくて赤面してしまう。 「環生は可愛いね。俺のキスがご褒美なの?」 「うん…」 いつも性的な触れ合いは控えめの麻斗さん。 だから、無理だけはさせたくない。 嫌だったら本気で断って欲しい。 でも…ご褒美のキスも欲しい。 麻斗さんといっぱいキスしたい。 「いいよ。100回で足りる?」 麻斗さんは笑いながら俺の頬を両手で包んでくれる。 「…足りなかったらおかわりしてもいい?」 おねだりするみたいに麻斗さんを見つめると、いいよ…の返事。 瞳を閉じるとゆっくり重なってくる優しい唇。 ちゅ、ちゅ…と、角度を変えて何度も何度も…。 100回もキスしてもらえるなんて贅沢。 頑張って留守番してよかった。 20回めを越えたあたりからは俺からもキスをした。 麻斗さんは俺を抱きしめてそれを受け入れてくれる。 何となく数えてるだけだけど、あっという間に50回めを迎えてしまった。 あと半分…。 普段の何でもない事なら『まだ半分ある』って思えるのに、麻斗さんのキスは『もう半分しかない』って思ってしまう。 いつもならキスをするうちに、もっとエッチな事をしたいって思うはずだけど、今日の俺は性欲より睡魔の方が強いみたい…。 80回めを迎える頃には、もう瞼が重くて重くて…。 「環生、ベッドへ行こうか」 「うん…」 眠い目を擦りながら麻斗さんのベッドへ。 麻斗さんにくっつきながら眠りやすいポジションを探る。 「ご褒美キスまだ残ってるよ」 また今度にする…?と聞いてくれるけど、俺は首を横に振る。 「眠るまでキスしてて…。麻斗さんにキスされながら眠りたい…」 無性に麻斗さんに甘えたくて仕方ない。 ワガママだってわかってるけど、望みを叶えて欲しい。 「いいよ。環生が眠るまでずっとキスしてるからゆっくり休んで」 「眠るまでじゃ嫌…。眠ってからもいっぱいキスして…」 半分寝ぼけながら甘える俺の髪を優しく撫でる麻斗さん。 そんなめちゃくちゃな俺を可愛いって思ってくれてるのが表情や手から伝わってくる。 「おやすみ、環生…」 「おやすみなさい、麻斗さん」 俺は麻斗さんの優しい唇の温もりを感じながら眠りについた。

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